宗教というと多くの人が思い浮かべるのが、「仏教」と「キリスト教」ではないでしょうか?
仏教の宗派と同じようにキリスト教の宗派である教派も数多く存在します。
今回は歴史から見るキリスト教の教派(宗派)の違いについてまとめます。
キリスト教とは
何気なく「キリスト教」と言っていますが、その歴史はとても深いものです。
現在においても様々な教派が存在しているため「キリスト教とは何か」を簡単に言い表す事は難しいです。
ただいずれの教派においても「聖書を教典としていること」は共通しています。
教派の違い一覧と覚え方
キリスト教には様々な教派がありますが主な教派と特徴は以下の通りです。
教派 | 特徴 | |
---|---|---|
西方教会 | カトリック | 最大規模の教派。ローマ教会、ローマ・カトリック教会、旧教とも呼ばれる。ローマ教皇がカトリックの最高指導者。 |
プロテスタント | 教徒数は2番目に多い。カトリックから分離独立した教派。新教とも呼ばれる。聖書中心主義。 | |
聖公会 | カトリックから分離した教派。カトリックとプロテスタントの中間の考え方。 | |
東方教会 | 正教会 | 教徒数は3番目に多い。教皇(法王)を定めていない。「東方教会」は正教会を表す場合もあり。 |
東方諸教会 | 東西教会の分離が起こる前に初代教会からすでに分離していた教派。他の教派とは「キリスト論」が異なっている。 |
多くの教派の前身である初代教会。
初代教会以降、大きく西方教会と東方教会に分裂しました。
そこからさまざまな教派に発展していきます。
ちなみに現在はカトリック、プロテスタント、正教会で世界のキリスト教信者の80%以上を占めています。
簡単に説明するとこういう表現になります。
さらに理解を深めるためには、ざっくりと「キリスト教の成り立ち」を知っておくと理解しやすいです。
キリスト教の成り立ち
キリスト教の成り立ちとして次のポイントが挙げられます。
- 旧約聖書をもとに発展したユダヤ教イエス派
- 新約聖書をもとに発展したキリスト教
詳しく見ていきます。
旧約聖書をもとに発展したユダヤ教イエス派
キリスト教が一般的に布教し始めたのは、紀元後2世紀までの間という考え方が一般的です。
よく聞く「紀元」とは「西暦」と同じ意味で使われることが多く、本記事でも同様の意味で使っています。
西暦とはイエス・キリストの誕生を基準に作られた暦です。
イエス・キリストが生まれたとされる年の翌年を「西暦元年」としています。
ちなみに今では「イエス・キリスト」とは、イエスが十字架に架けられ刑死した後、復活し神格化した存在とされています。
これに対し、刑死以前のイエス(神格化以前のイエス)は「ナザレのイエス」と表現されています。
話を戻して、キリスト教の始まりは「ユダヤ教の一派」でした。
ナザレのイエスも、ユダヤ教信者です。
ユダヤ教の教えは、「旧約聖書」と呼ばれています。
しかしユダヤ教指導層の堕落に危機感を覚えたイエスは、その当時のユダヤ教改革運動として、ユダヤ教の「旧約聖書」に基づいた自らの教えを宣教し、広めました。
こうして生まれたのが「ユダヤ教イエス派(ナザレ派、キリスト派)」です。
新約聖書をもとに発展したキリスト教
ユダヤ教イエス派がキリスト教として独立するのは、新約聖書が登場した辺りからと考えられています。
この新約聖書がまとめられたとされるのが「紀元1~2世紀」です。
なので、キリスト教が一般的に布教し始めたのは「紀元後2世紀までの間」と考えられているのです。
ナザレのイエスの没後にイエスの教えを弟子たちが布教し、書にまとめたものが「新約聖書」といわれています。
- 旧約聖書をもとに、イエスが宣教したものがユダヤ教イエス派
- ナザレのイエスの没後、弟子たちが、イエスの考えや言動をまとめたものが新約聖書
- 新約聖書を教典として、発展したのがキリスト教の始まり
この新約とは「新しい契約」の略と言われています。
イエスが救世主として復活するときに「罪ある人間を救済するために、新しく神との契約を結んだ」と考えられていることから、新約聖書と呼ばれています。
参考
キリスト教の教派の違い
先にも述べたように、キリスト教の教派は数多く存在しています。
今回はその中でも代表的ものについて説明します。
ちなみにキリスト教の場合は教派を「○○教会」と呼ぶことが多いようです。
初代教会
キリスト教成立最初期の教派です。
今ある多くの教派も、この初代教会が前身となっています。
各教派の違い
初代教会以後、各地でキリスト教が布教し始めると、共通の「聖書」を教典としていても、人によって微妙な解釈の違いが生まれます。
例えば聖書の言葉ではありませんが「月が綺麗ですね」という一文に対しても、人によって受け取り方は様々です。
ある人は「満月」を思い浮かべ、またある人は「三日月」を思い浮かべ、また別の人は「愛の告白」と受けとる人もいます。
このように、ちょっとした解釈の違いが重なって、時には大きな違いを生むことがあります。
今ある多くの教派も、この「聖書に対する解釈の違い」が大きな違いを生み、それぞれの教派の特徴となっています。
これは何もキリスト教に限った話ではありません。
仏教の各派でも言えることですし、もっと拡大すると、国ごとの思想の違いにも通ずることかもしれません。
西方教会と東方教会
初代教会以降、大きな教派の分裂がありました。
それが西方教会と東方教会の分裂です。
西ローマ帝国で発展した教派が「西方教会」、東ローマ帝国で発展した教派が「東方教会」です。
現在ある教派の多くも、この二つに大別することが出来ます。
西方教会
東ローマ帝国で発展した西方教会系教派について解説します。
カトリック教会
西方教会の源泉とも言えるのがこの「カトリック教会」です。
ローマ教皇を中心とした教会で、現在のキリスト教の中で最大規模の教派です。
世界の信者数は12億人以上と、とんでもない人数になっています。
プロテスタント
カトリック教会から、分離独立した教派の総称です。
宗教改革でカトリックから分離した一つが「プロテスタント」です。
教派一覧
- ルーテル教会
- 改革派教会
- メソジスト教会
- パプテスト教会
プロテスタントには、上記のような教派が含まれています。
日本ではカトリックを「旧教」、プロテスタントを「新教」と呼ぶこともあります。
信者数は5億人前後と言われています。
聖公会
プロテスタントと同じく、宗教改革でカトリックから分離した教派です。
その考え方は「カトリックとプロテスタントの中間」といったところでしょうか。
信者数は7000万人以上と言われています。
東方教会
東ローマ帝国で発展した東方教会系教派を解説します。
正教会(ギリシャ教会)
東西教会の分離の際に、カトリック教会と対立したのが、この「正教会」です。
「東方教会」というと、そのまま正教会を表す場合もあります。
一方、「西方教会」というと、カトリック以外にも、特徴の異なる教派を意味します。
このことからわかるように、東方教会は西方教会(カトリック教会)のように「大きな教派の独立運動がなかった教派」ということが分かります。
何故かというと、ローマ教皇率いるカトリック教会とは違い、正教会の特徴としては「教皇(法王)を定めていません。」
そのため、絶対権力の集中が起こらずに、大きな不満・腐敗を生まなかったことが、宗教改革のような「大きな分離運動が起こらなかった理由の一つ」として考えられます。
世界中で2億人以上は信者がいると言われています。
東方諸教会
非カルケドン派とアッシリア東方教会からなる教派です。
こちらの教派は、東方教会として数えられていますが、正教会から分離した教派ではありません。
東西教会の分離という、大きな対立が起きる以前に、初代教会からすでに分離していた教派です。
東西分離運動とは別に、「もともと布教していた地域が東ローマの辺りだったから東方教会に括られている」という解釈の方が正しいと思います。
多くの教派が初代教会を前身としています。
それに対し、初代教会から「独立」した東方諸教会は、他の教派とは「キリスト論」が異なっているのが特徴です。
その他の教派
現在、主となるキリスト教の教派としては先述の通りです。
ですが当然、その他にも多くの、本当に多くの教派が存在しています。
ただ、教派は違えど大半の教派が「三位一体という概念」を共有しているのは同じです。
この「三位一体」とは、説明できない概念です。
wikipediaにも同様のことが記載されています。
三位一体論が難解であることはキリスト教会においても前提となっている。
正教会においては、「三つが一つであり、一つが三つというのは理解を超えていること」とし、三位一体についても「理解する」対象ではなく「信じる」対象としての神秘であると強調される引用:wikipedia
私の解釈が間違っていなければ・・・
「三位一体」の思想の元では「イエス・キリストも神である」ということを肯定できる、と考えています。
そして、この「三位一体」と「聖書」というキーワードが、現在のキリスト教を定義づけるキーワードだと個人的には思っています。
しかし、中には「三位一体」を否定する教派もあります。
その一つが「エホバの証人」です。
エホバの証人では三位一体を否定し、「神はエホバ、イエスは神の子であり神ではない」としています。
まぁエホバの証人に関しては、キリスト教の一派という考え方よりも、「キリスト教系の新宗教という考え方」の方が主となっています。
まとめ
キリスト教の教派は本当に沢山あります。
その一つを理解するのは大変かもしれません。
ですが「キリスト教の成り立ち」や、「東西の分裂」、「宗教改革の歴史」などを合わせて理解すると、教派の分類がしやすく理解が進むはずです。
あなたも久しぶりに世界史の勉強でもしてみませんか?