多くの人が知っている、キリスト教や仏教には開祖がいて、教典が存在します。
しかし、世界には開祖や教典などが存在していない宗教も数多くあるんです。
その中のひとつが民間信仰です。
実は神道も成り立ちは民間信仰から。
では、民間信仰とは一体どのようなものか、日本における事例を参考に解説していきます!
ということで今回は、
民間信仰とは【日本と世界の代表例】まとめ
をお送りします。
民間信仰とは何か
民間信仰というのは、古代から一般庶民の間で信じられてきた極めて原始的的な信仰です。
崇拝対象は様々ですが、中心的な信仰は「祖先崇拝」と「自然信仰」です。
どちらも一般庶民の生活や習俗に基づき、自然発生的に生まれました。
そのため先に挙げた通り、開祖や教典などは存在していません。
これらの信仰は日本全国に見られ、現在にいたるまで神道や仏教に習合されるなど、変化を続け伝承され続けています。
では、実際に例を見てみましょう。
神道における信仰となった「氏神」
「氏神」は、祖先信仰的な民間信仰のひとつです。
その名の通り、同じ氏姓の氏族の間で、自らの祖先や氏族に縁の深い神様を祀っていたことに由来します。
「氏神」の近くに住み、信仰する人々の事を氏子と言い、氏子は講と呼ばれる結社を結成し、祭りや信仰など代々伝承しています。
「氏神」は元々民間信仰でしたが、神道と習合したため、現在では神社にて「氏神」が祀られています。
山への畏敬が生み出した「山岳信仰」
山岳信仰は自然信仰的な民間信仰のひとつです。
古代、山とともに暮らして来た人々は、山の恵に対して感謝し、ともすれば命を奪う山に対して畏怖の念を抱くなど、山に対して特別な想いを抱いていました。
さらには山の雄大な姿を見るにつけ、山には神様が宿ると考えたのです。
そのため、人々は山を崇拝し時には山の神の元で儀礼を行いました。
江戸時代までは【神仏習合】に吸収される形でしたが、明治新政府の出した【神仏分離令】以降は、神社の体裁をとってきました。
新しい「修験道」という宗教
さらに、山岳信仰は神道や密教と習合し「修験道」という独自の宗教も生み出したのです。
「修験道」は修行をする事により山の霊力を手にする事が出来ると考えられています。
現在でも、奈良県の金峯山寺や京都市の聖護院、同じく京都市の醍醐寺で信仰が行われています。
「ハレとケ」そして「ケガレ」の概念が生み出した民間信仰的儀礼
一度や二度は「ハレとケ」という言葉を聞いた事があるのではないでしょうか。
「ハレ」というのは、盆・正月などの節目や成人・結婚・出産・年祝など人生の晴れ舞台の事です。
一方「ケ」というのは、普段の生活の事。
つまり、古く日本人は「ハレ」と「ケ」で生活にけじめをつけていました。
「ハレ」の日は普段食べない白米を食べるなど出来ましたが、この白米は自分たちが食べると言うよりも、神様への供物という側面の方が大きかったと考えられます。
つまり、「ハレ」の日は神様のための祭りでもあり、ハレの日の儀礼は特定の神様の元で執り行われていた訳です。
また、「ハレ」の日には「ケガレ」の概念も大きく関わっています。
「ケガレ」とは「ケ」が枯れた状態=活力が弱まった状態です。
人々は「ケ」を維持する事を基本として生きています。
しかし時に「ケ」は枯れ「ケガレ」となり、「ケガレ」は放置すると、最悪死に至ってしまうと考えられました。
「ケガレ」の中で最も影響が大きかったのは、出産による「ケガレ」と葬儀によるケガレです。
このふたつには全国的に共通した儀礼が行われています。
出産によるケガレ「産穢(さんえ)」
産穢は誕生した子どもと出産した母親の両方にかかります。
しかし、子どもは30日でケガレから回復しお宮参りが出来るようになるのに対し、母親は100日近く外に出られない地域もありました。
これはケガレの根本は母親であると考えられたためです。
ケガレとは活力が弱まった状態なので、出産で体力が落ち衰弱した状態の母親は、そのものがケガレなのです。
また、出産後すぐに炊かれる産飯は産神への供物であるとともに、子どもと母親を悪霊から守るためのものだと考えられていました。
これは、衰弱した母親の体力回復には、活力のある食物が必要であったことが関係しています。
さらに、子どもは産湯で身体を洗われますが、これはケガレを洗い流し丈夫に育つように願う、呪術的な意味合いもありました。
葬式によるケガレ「死穢(しえ)」
人が息絶えた瞬間に行われるのは「魂呼ばい」という、肉体から乖離した霊魂を呼び戻そうとする呪法の一種です。
枕元で死者に向かい呼びかける場合もあれば、海や山に向かって叫んだり、あるいは死者の衣服を振ったりなどします。
さらに、霊魂が乖離した時点でケガレは始まり、乖離した霊魂は悪霊などになってしまう危険性があると考えられました。
そのため、死者の枕元に枕飯を供え、念仏を唱え霊魂を慰める必要がありました。
また、死者の近くにいる人もケガレに汚染されると考えたのは、乖離した霊魂が、生者にも影響を与える恐れがあったためです。
乖離した霊魂が悪霊となっていれば、モノノケとして悪さをするため、生者も死者と同じものを食べ、死者と同じ状態にして、それを防ぐ必要がありました。
さらに、出棺の際は膳が出され、近親者のみ食事をします。
これは空腹だと【死者を死に至らしめたもの】に取り憑かれやすくなるため、棺と一緒に墓地に行く人は、しっかりとご飯を食べ、【死に至らしめたもの】に負けない力をつけるためです。
四十九日は忌明けと言われ、四十九日の笠餅を作り、故人に供えてから親族や寺に配られます。
そしてこの日以降は神社へ参詣したり、魚を食べたりなど、ケの生活へ戻る事が出来ました。
世界における民間信仰
このような民間信仰は日本のみならず世界でも見られます。
中国で最もポピュラーな民間信仰【道教】
代表的な例を挙げると、中国の【道教】です。
道教は、漢民族の間で自然発生的に生まれ、伝承されていった民間信仰が元になっています。
現在、道教は大きくふたつに分けることが出来ます。
ひとつは、古来の民間信仰に、神仙説や祈祷儀礼、占術などを加え成立させたもの「成立道教」です。
「成立道教」には開祖がいて、特定の教義や教団を持つものも少なくありません。
そしてもうひとつは「民衆道教」と言われるもので、こちらは儒教以外の中国の民間信仰を指します。
つまり、中国独自の宗教の根底は【道教】なのです。
基本概念は「道(タオ)」と呼ばれるもので、宇宙と人生の根源的な不滅の真理を表します。
この道と一体となる修行のために、練丹術を用いて丹を練り、仙人となる事を理想としています。
一度は文化大革命の元、多くの宗教同様に弾圧を受けましたが、1980年代には徐々に宗教活動が認められるようになり、道教は復活を果たしました。
保護された聖地【ウルル】
そのほか、先日ニュースにもなっていた「エアーズロックへの入山禁止」。
元々エアーズロックはオーストラリアの先住民アボリジニにとっては聖地であり、アボリジニにとっての正式名称はウルルと言います。
このウルルは、アボリジニからオーストラリア政府に貸し出されていましたが、この度ついに、アボリジニに取ってウルルが聖域であるという理由から入山が禁止となりました。
このウルルへの信仰もアボリジニたちの自然信仰的な民間信仰のひとつです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
このように世界中には様々な民間信仰が存在しています。
それら全てには先人たちの知恵やイマジネーションが詰まっているので、一度自分の住んでいる地域なども調べてみると面白いかもしれませんよ。