結婚式と言えば、指輪の交換や愛の誓いなど様々ありますが…
その中のひとつに讃美歌がありますね。
結婚式くらいでしかキリスト教と触れ合う機会のない日本人にとっては、行事で歌を歌うということに違和感を抱く方も多いでしょう。
歌詞カードが座席においてあって「さぁみなさんご一緒に!」と言われれば、その場の雰囲気で歌ってはいるものの…
讃美歌には一体どんな意味があるのか?
分かって歌っている人はほぼいないですよね。
讃美歌の意味について、詳しく解説していきます。
讃美歌とは
讃美歌とは「神を讃美する歌のこと」となります。
主にプロテスタント系教会で使われます。
※讃と賛の使い分けにこれといった意味はありません。
聖書内では、たびたび神を讃えるために歌を歌うシーンが登場します。
キリスト教の伝統文化として「歌う」ということが根付いているのです。
礼拝や結婚式など会合の際、神を讃えるために讃美歌を選ぶ理由は「聖書の中に度々歌うシーンが登場するから」だと考えられます。
定番讃美歌の歌詞から読み解く意味
ある程度、結婚式に出席したことがあれば、知らない方はいないのでは?というくらいの定番ソングが、讃美歌312番「いつくしみ深き」です。
この歌詞の意味は、恋人同士のラブソングというものではなく、イエスキリストを讃える内容となっています。
1 いつくしみ深き 友なるイエスは、
罪とが憂いを 取り去りたもう。
こころの嘆きを 包まず述べて、
などかは下(おろ)さぬ、負える重荷を。
2 いつくしみ深き 友なるイエスは、
われらの弱きを 知りて憐れむ。
悩みかなしみに 沈めるときも、
祈りにこたえて 慰めたまわん。
3 いつくしみ深き 友なるイエスは、
かわらぬ愛もて 導きたもう。
世の友われらを 棄て去るときも、
祈りにこたえて 労(いたわ)りたまわん。
引用:讃美歌312番 いつくしみ深き
れっきとした日本語歌詞ではあるものの…
古めかしい歌詞で何を言っているのか分かりにくいですよね。
簡単に意訳すると以下のようになります。
歌詞の意訳
「どんな困難でも、主イエスは全てを請け負ってくれます。もし困難に苦しむのであれば、それは祈りが足りないからです。どんなにつらい状況でも祈りを捧げれば、イエスがあなたを守ってくれるでしょう」
ぶっちゃけ、キリスト教徒でなかったら、まったくピンとこない内容ですよね。
まさに神を讃える歌なのです。
讃美歌の種類と数
「いつくしみ深き」が312番なので、何となく察しが付くかもしれませんが…
讃美歌にはなんと、600曲もの種類があるのです。
※312番などは歌詞の番号ではなく、曲の番号。
敬虔なクリスチャンは覚えきれているのでしょうか?
途方もない種類ですよね。
なぜこうも種類があるのかと言えば、シーンごとに曲が用意されているからです。
賛美歌集は、礼拝(開会、閉会、信仰告白)、教会暦ないしイエス・キリストの生涯(待降、降誕、公生涯、受難、復活、再臨)、信仰生活といった項目ごとに構成されることが多い。おおむね600曲が、讃美歌集として礼拝に必要な数であるといわれている。
引用:讃美歌集一覧
これらの曲は讃美歌集として多数販売されておりますので、ご興味のある方は手に取ってみてください。
讃美歌と聖歌の違い
讃美歌と似ているもので「聖歌」があります。
意味的な違いも多少ありますが、その大きな違いは教派の違いです。
聖歌 | 讃美歌 | |
教派 | 東方教会/カトリック/聖公会など | プロテスタント/西方教会など |
用途 | 儀礼など公的なもの | 礼拝など一般向け |
分類 | 聖歌には讃美歌も含まれる | 聖歌の中の一種 |
ともに宗教歌であり、聖歌の中には讃美歌が含まれることもありますが、逆はありません。
仏教でいえば、葬式などでガッツリ唱えるお経が聖歌で、一般でも読みやすい念仏やお題目が讃美歌と言ったところでしょうか。
神父か牧師かの違いと似たようなものと考えれば良いでしょう。
定番の有名な讃美歌
讃美歌の種類は上記したように豊富です。
その中でも「定番ソング」が存在します。
讃美歌は皆が歌うものなので、ある程度有名な曲を選ぶことが多いです。
お葬式の讃美歌|320番「主よ御許(みもと)に近づかん」
賛美歌はキリスト式の葬儀で火葬前に歌うことがあります。
讃美歌320番の歌詞の内容は、今まさに天に召されようとしている人を歌った内容になっています。
主よ、みもとに近づかん
のぼる道は十字架に
ありともなど悲しむべき
主よ、みもとに近づかん
さすらうまに日は暮れ
石のうえのかりねの
夢にもなお天を望み
主よ、みもとに近づかん
主のつかいはみ空に
かよう梯のうえより
招きぬればいざ登りて
主よ、みもとに近づかん
目覚めてのちまくらの
石を立ててめぐみを
いよよせつに称えつつぞ
主よ、みもとに近づかん
うつし世をばはなれて
天がける日きたらば
いよよちかくみもとにゆき
主のみかおをあおぎみん
引用:讃美歌 320番 主よみもとに
また、お墓に入れる埋葬時にも賛美歌を使用することがあります。
その時は312番「いつくしみ深き」であることが多いですね。
ちなみに「主よ御許(みもと)に近づかん」はタイタニック号が沈没する最中、船上でバンドメンバーが演奏したとう逸話が残っています。
このエピソードは映画タイタニックでも取り入れられています。
自らの死せる運命を受け入れ、祝福を受けんとする姿勢は胸に響くものがありますよね。
知っていると映画の見方も変わってくるはずですよ。
クリスマスの讃美歌|21番「きよしこの夜」
これは「いつくしみ深き」以上に誰しもが知っている歌ですよね。
クリスマスシーズンになると、いたる所で耳にする「きよしこの夜」も、実は讃美歌の一つなのです。
その歌詞の内容は、イエスキリストの誕生を讃美する内容になっています。
もともとクリスマスとはキリストの誕生日を祝う日ですからね。
1 きよしこのよる 星はひかり、
すくいのみ子は まぶねの中に
ねむりたもう、いとやすく。
2 きよしこのよる み告げうけし
まきびとたちは み子のみ前に
ぬかずきぬ、かしこみて。
3 きよしこのよる み子の笑みに、
めぐみの み代(みよ)の あしたのひかり
かがやけり、ほがらかに。
引用:讃美歌12番 きよしこの夜
最近ではもっぱら性夜と化した日本のクリスマスですが、サンタクロースやカップルを歌った内容ではありません(笑)
進化した讃美歌
讃美歌(聖歌)は教派によって内容が異なり、また時代とともに新しい要素が取り入れられています。
コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック(現代的キリスト教音楽)として、1960年代頃からアメリカで発展し、社会的に影響を与えています。
その中でも独自の進化を遂げたのが「ゴスペル」です。
ゴスペルはアメリカで発祥した音楽ジャンルの一つで、元々の由来は讃美歌でした。
かつて黒人が奴隷として扱われていた時代に、アフリカからアメリカに連行されてきた黒人が、アフリカ特有のリズムやメロディーを讃美歌に与えることで、独自に神への讃美をささげるようになりました。
その後、ジャズやロックなどその他の様々なジャンルと結びつき、やがて、ゴスペルと呼ばれる一つの音楽体系を作り上げることとなります。
大ヒット映画である「天使にラブ・ソングを」は、このゴスペルを題材にした映画であり、ゴスペルを世界的に広めるきっかけになった作品でもあります。
讃美歌と関係はありませんが、ラップの起源もアメリカの人種差別を起源とするものです。
奴隷文化は忌むべき歴史ではあります。
しかし、その過酷な環境は、反骨精神や気高い文化が養われる環境でもあったのかも知れません。
まとめ
讃美歌は神を讃える歌で、プロテスタント系の宗派の宗教歌です。
その種類や歌詞の内容は様々ありますが、皆が歌うものなので、ある程度知られた歌がよく歌われます。
全てを覚えるのは大変ですが、代表的なものだけでも覚えておくといいかもしれませんね。
余談ですが、私は讃美歌のひとつ「アメイジンググレイス」が大好きです。
神秘的な雰囲気が何とも心地良いですよね!
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