「イスラム教」にどんなイメージを持っていますか?
礼拝や断食などの規律の多い宗教、はたまたテロをイメージして、怖いと思っている方も多いと思います。
しかし実際のところ、イスラム教について知らないことの方が多いですよね?
知らないからこそ、良くないイメージを持ってしまっているということもあります。
そこで今回はイスラム教の教えや、危険でやばいと言われる理由について解説します。
この記事でイスラム教について学べば、彼らに対するイメージが変わりますよ。
イスラム教とは
イスラム教の始まりは、西暦610年頃です。
預言者ムハンマドがメッカ郊外で神の啓示を受け、アラビア半島でイスラム教を開始しました。
唯一絶対の神(アッラー)を信仰し、神が預言者を通じて人々に啓示したとされるクルアーン(コーラン)の教えを信じ、従います。
イスラム教は、ユダヤ教やキリスト教の影響を受けていると言われています。
追って説明するように、コーランと聖書には似ているところがあるのです。
イスラム教の特徴は、神への奉仕を重んじ、信徒同士の相互扶助関係や一体感を重んじる点です。
イスラム教は世界三大宗教の1つで、キリスト教に次いで2番目に多くの信者がいます。
2010年時点で約16億人なので、相当な信者数がいることがわかりますよね。
イスラム教徒のことを、アラビア語起源の言葉で「ムスリム」といいます。
世界のムスリム人口は、多子化やアフリカ内陸部などでの布教の浸透によって、現在も拡大を続けているんです。
イスラムの宗派
イスラム教には、「スンニ(スンナ)派」と「シーア派」という二大宗派があります。
スンニ派が約90%を占めており、シーア派は約10%です。
分裂のきっかけは、ムハンマドの死後に起きた後継者争いでした。
ムハンマドの死後、最初はムハンマドと血縁関係のない人が後継者として「カリフ(代表者)」に選ばれていました。
しかし4代目の後継者を選ぶ際、3代目の息子ムアーウィアと、ムハンマドの従弟アリーの間で対立が起こります。
結果的に対立は調停されますが、アリーは暗殺され、ムアーウィアはウマイヤ朝を興し、初代カリフに就任。
これをきっかけに、スンニ派とシーア派が分かれることとなりました。
簡単に違いをまとめると、ムハンマドの血縁を重視しているのがシーア派。
一方でスンニ派は、ムハンマドが遺した「慣行(スンニ)」や教えを重要視しているのが特徴です。
日本におけるイスラム教
日本ではイスラム教は一般的ではなく、信者数も少ないです。
詳細な調査が行われていないため、具体的な信者数はわかっておらず、様々な説があります。
1,000人以下とする調査から、7万人という調査もあるので、開きがありますね。
体感として、イスラム教徒の知り合いがいる人は、かなり少ないのではないでしょうか。
日本人ムスリムは、8割近くが外国人ムスリムとの結婚により改宗した人だそうです。
日本にイスラム教が初めて登場したのは、明治維新後の開国の時代になってからです。
意外かもしれませんが、今では、日本各地にモスク(礼拝堂)があります。
日本最大の「東京ジャーミィ」は見学ができ、イスラム教徒ではない人にも人気の場所になっています。
日本の芸能人では、元プロレスラーのアントニオ猪木さんがイスラム教に改宗したと公表しています。
一方で、「真光系教団」に入信していることも、 「崇教真光(現代のこころ)」という本で公表しています。
イスラム教への改宗が1991年のことだそうなので、イスラム教への改宗の方が時期的に後です。
詳細はわかりませんが、どちらにせよ日本人がイスラム教に改宗するのはかなり稀ですね。
イスラム教の教え
イスラム教の聖典としてすべてのムスリムが認め、従うのは「クルアーン(コーラン)」です。
※正式名称は「クルアーン」ですが、本記事では日本人に馴染み深い「コーラン」で統一します。
コーランは、イスラム教の唯一絶対の神(アッラー)から、預言者であるムハンマドに下された啓示をまとめたものです。
シーア派は、コーランのみを聖典としています。
一方でスンニ派は、ムハンマドの言葉や行動を「スンナ(慣習)」としてまとめたものを「ハディース」と呼び、コーランに次ぐ指針としています。
先述したように、コーランの内容はユダヤ教の「旧約聖書」やキリスト教の「新約聖書」と共通する部分があります。
特に、旧約聖書の内容と似通っていると言われているんです。
実際にコーランには「コーランは聖書の正しさを証明するためにある」という趣旨の言葉が綴られている箇所が数多くあります。
聖書と大きく異なる点は、聖書が物語風に書かれているのに対し、コーランは行動規範集のようなもので、暗唱するものとして書かれています。
また、コーランはアラビア語以外で書かれたものは聖典としては扱われないなど、厳格な決まりがあります。
さらに、イスラム教ではコーランの批判や、破損することを犯罪と規定しています。
過去には、コーランを燃やした男性が死刑判決を受けた事例もあるほどなんですよ。
六信五行
イスラム教の信仰の根幹は「六信五行」といい、6つの信仰箇条と、5つの信仰行為から成り立っています。
六信とは、以下の通りです。
六信
- 唯一神:アッラー以外に神はいないと信じる
- 天使:アッラーの命令を忠実に実行する天使の存在を信じる
- 啓典:預言者に下された教典を信じる
- 預言者:アッラーから送られた預言者が存在していたことを信じる
- 来世:死後の世界の存在を信じる
- 定命:すべての人間の運命はアッラーの定めた天命と信じる
つづいて、五行です。
五行
- 信仰告白(シャハーダ):「アッラーの他に神は無い。ムハンマドは神の使徒である。」と証言する
- 礼拝(サラー):1日5回、メッカに向かって礼拝をする
- 喜捨(ザカート):収入の一部を困窮者に施す
- 断食(サウム):9月(ラマダーン)の日中、飲食を慎む
- 巡礼(ハッジ):必須ではないが、聖地メッカへの巡礼をする
偶像崇拝の禁止
イスラム教においては、偶像崇拝の禁止が徹底されています。
ですので、ムスリムが礼拝を行うモスクは、他宗教の寺院や聖堂とは大きく異なります。
内部に、宗教シンボルや聖像などがありません。
つまりキリスト教でいうところの、キリスト像がないということです。
モスクは、広い空間に絨毯や茣蓙(ござ)が敷き詰められているだけで、そこでメッカの方角(キブラ)を向いて祈るのです。
イスラム教はやばい?
多くの人がイスラム教をやばいと考える理由は、以下の2つが多いですよね。
やばいとされる理由
- 戒律がかなり厳しい
- テロリストが多い
誤解している部分もありますので、それぞれ解説していきます。
1.戒律がかなり厳しい
やはり1番にあげられるのは、戒律が厳しいことでしょう。
教義の「六信五行」でも書いたように、イスラム教は戒律が多いです。
礼拝回数が多すぎる!?
特に1日5回の礼拝は、イスラム教徒以外からすると異様な光景に見えてしまうこともありますよね。
最初の礼拝は夜明けなので、朝5時前にはモスクから大音量のお祈りが流れるそうです。
1日5回もお祈りしていたら、ちょっと生活がままならない・・・というか私なら1~2回忘れてしまいそうです。
また、イスラム教徒はどこにいてもお祈りをするのが決まりです。
サッカーの試合中にも、お祈りの時はスタンドから外に出て行うのです。
私自身、デパートの階段の踊り場でお祈りしている人を見て、衝撃を受けた記憶があります。
断食や食に関する戒律がきつい!?
加えて、イスラム教で有名なのは断食ですね。
9月(ラマダーン)の日中、飲食を慎むことになっています。
他にも、豚肉やアルコール飲料がイスラム法で禁止されています。
逆に、イスラム法で合法とされているものを「ハラール」といいます。
最近は日本でも「ハラール」を扱う飲食店が増えてきています。
しかし、これらも戒律に敬虔な方もいれば、だいぶ柔軟に対応している方も、両方存在しています。
特にイスラム教が主教ではない海外で働く信者さんなどは、どうしても誘惑に負けてしまう場合も多いようですね。
どこのサイトか失念してしまいましたが、以前、イスラム教徒3人を集めて色々戒律について尋ねたり、豚肉やアルコールをたしなむ様子が書かれた記事を拝見したことがあります。
敬虔な人は一切口にしていませんでしたが、普通に食べちゃっている人もいましたね。
これらは仏教においても同じですよね。
そもそもお坊さんたちは肉食やアルコール、結婚などは禁じられていました。
ですが、現在の日本仏教ではとてもおおらか。
お坊さん方も、普通に肉を食らえば酒も飲む。
結婚もすれば、良い女をはべらしに街へ出る。
時代とともに戒律というものはうつろうものなのですね。
服装が厳しい?
一目でわかるイスラム教徒の特徴は、服装でしょう。
男女ともに、体の露出を少なくすることが求められています。
特に女性は、顔と手以外を隠し、近親者以外には目立たないようにしなければなりません。
ただ、今の若者のイスラム教徒は、服装などはそこまで厳格ではないそうです。
以上のように、ほとんどすべてのことに戒律があると言っても過言ではないので、窮屈に感じてしまいますよね。
他の宗教や無宗教の人から見ると、敬虔なイスラム教徒はやばい!と思ってしまうのも仕方ないのかもしれません。
2.テロリストが多い
イスラム教と聞いて、テロをイメージする方も多いのではないでしょうか?
確かに9.11のアメリカ同時多発テロ以降、「イスラム教=テロリスト」というイメージがついてしまいました。
特に日本では、イスラム国(ISIL)が日本人2名の殺害事件を起こしたのが記憶に新しいですね。
しかし、テロを起こしたのはイスラム過激派で、大多数のイスラム教徒たちは関係ありません。
むしろ、一部のテロリストのせいでイスラム教に悪いイメージがついてしまい、迷惑を被っているのです。
多くのイスラム教徒は、みんな仲良く、平和で豊かに暮らしたいと考えています。
優しく、明るい性格の方が多いといいます。
それは、「五行」の1つである断食の由来を理解すると納得できます。
断食は、もともと貧しく食事が食べれない人の気持ちを理解するために始められました。
そのため、この時期にはお金を持っている人が食事を無料で配布するのです。
イスラム教では、貧しい人に対する思いやりがとても重要とされています。
このように、イスラム教には助け合いの精神が根付いているのです。
ごく一部のイスラム過激派がテロを行っているだけで、「イスラム教=テロリスト」は誤りということがわかりますね。
まとめ
今回は、イスラム教についてまとめました。
イスラム教を詳しく知れば知るほど、イスラム教について誤解していることが多いということがわかります。
イスラム教と言っても、国によって文化や習慣は違います。
イスラム文化圏に行く際には、きちんと調べて、その地域の習慣に従うようにしましょうね。