新興宗教の1つに「璽宇」という宗教団体があります。
あまり聞いたことのない人も多いのではないでしょうか。
それもそのはずで、現在はほとんど勢力のない宗教です。
しかし、終戦直後は一斉を風靡していました。
今回は、璽宇がどのような宗教団体なのか、かつてはどのような活動をしていたのかをまとめました。
璽宇とは
璽宇(じう)は、第二次世界大戦中にできた宗教団体です。
鉱山事業家である峰村恭平の「篁道大教」という神道系の団体が母体となっています。
そこに、大本系列の心霊研究団体菊花会と、中国の新宗教世界紅卍字会のグループが合流したことで、1941年に「璽宇」と改めました。
その後、真言密教系の霊能者として活動していた、長岡良子のグループも璽宇に合流しました。
その長岡良子が「真の人」という冊子の作成などで頭角を表し、信者の信望を集めるようになります。
長岡良子にとってはさらに幸運なことに、1945年5月の東京大空襲で璽宇本部の峰村邸が焼失し、峰村恭平は教団から身を引くことになります。
これにより璽宇の指導者は事実上、長岡良子となったのです。
戦後の1945年11月15日に、璽宇は発足式を開催し、再スタートしました。
1984年の長岡良子の死後は、宗教活動はほとんど行われていません。
現在も教団自体は存在しますが、宗教法人格もなく、ほとんど勢力はありません。
そのため、現在の信者数のデータも見つかりませんでした。
璽宇の教え
璽宇では、人間は4つに分類されるという「人間四段階説」をとっていました。
それが、以下の4つです。
ポイント
- 天責者：璽宇が掲げる「世直し」を助ける存在。全世界で30人いるとされている。
- 地責者：天責者を助ける存在。全世界で3000人いるとされている。
- 邪霊：一般人。魔霊に惑わされやすい存在とされている。
- 魔霊：諸悪の根源といえる存在。全世界で3004匹いるとされている。璽宇ではその内の数匹を飼い馴らすことで、社会に害悪を流すのを防いでいるとしており、信者の何人かは「魔霊」とされている。
より上の階層へ行きたい、という心理を上手く利用していたのかもしれませんね。
璽宇は危険？
璽宇が危険と思われているのは、過去に世間を騒がす事件を起こしていることが関係しています。
1947年に起きた、長岡良子と璽宇の信者が逮捕される、璽光尊事件です。
璽宇が勢力を持ち始めたのは、終戦の翌年、昭和天皇が人間宣言を行ったのがきっかけです。
それを機に、長岡良子は「天皇の神性」は自分に乗り移ったと宣言します。
そして「天璽照妙光良姫皇尊(略称：璽光尊)」を名乗り、璽光尊の住まいを「璽宇皇居」と称しました。
さらには、仮想的な内閣まで組織しました。
世直しの「天責者」とする天皇や皇族の参加も呼びかけ、マッカーサーへ2度の直訴もしています。
璽光尊は、天変地異の預言を盛んに言っていました。
この喧伝に動揺した住民が白米等の貴重な食料を持って訪れたことが警察の目にとまり、璽光尊と信者が食糧管理法違反で逮捕されます。
これが璽光尊事件です。
璽光尊は釈放されますが、この事件を境に勢力は一気に衰えました。
そして各地を転々とした後、最終的に神奈川県藤沢市に拠点を移すことになります。
璽宇に入信している芸能人
璽宇に入信していた有名人で代表的なのは、以下の2人です。
- 双葉山定次(力士)：第35代横綱。力士を引退した翌年の1946年に入信。
- 呉清源(棋士)：「昭和の棋聖」と呼ばれた囲碁の名手。広告塔的存在で、妻も教団の中心的役割を担っていた。
璽光尊事件の時に、警察の侵入を阻止したのが双葉山でした。
日本の敗戦による虚脱感から、璽宇にマインドコントロールされていたと言われています。
現在は宗教活動がほとんど行われていないので、現在進行形で活動している方の話は聞きません。
璽宇は、そもそも布教を禁止していたそうです。
そのようなことをせずとも、最終的には他宗教全てが璽宇に帰依するという考えからだそう。
また、教団の運営費は信者の自発的な寄附に委ねられており、強要はしていなかったそうです。
まとめ
璽宇の歴史を見ると、指導者の長岡良子が絶対的な力を持っていたように見えます。
活発に活動していた当時でさえ布教を禁止していたのにも関わらず、信者が集まるのも納得ですよね。
そして指導者がいなくなった今、勢力が弱まるのは必然的だったのでしょう。
璽宇は公式HPなどもなく、現在は活動もしていない宗教です。
過去にはこんなにも世間を賑わせてきた宗教があったのですね。
