信教の自由を守るために必要な政教分離の原則。
わかりやすくいうと、国家が宗教的に中立であるということです。
しかし、実際に宗教団体を支持母体とする政党もあります。
今回は、
政教分離原則とは|わかりやすく内容と実態を解説
をお送りします。
政教分離原則とは
国家(政府)と教会(宗教団体)の分離のこと。
国家が宗教的に中立であることが求められており、政治権力が特定の宗教団体を援助したり圧迫しないように定めた原則のことです。
歴史的背景
戦前の大日本帝国憲法下での政教一致の政治体制のなかで国民の思想の統制がすすめられ、「神社神道」以外の宗教に対する迫害・抑圧・弾圧が行われました。
基本的人権の要と言われる「宗教の自由」がなかった時代のことです。
国家と宗教が密接に結びつくことで政治権力に都合のいい仕組みや体制が作られ、国民を愛国主義・軍国主義になるように働きかけました。
政教一致のわかりやすいものとして「靖国神社の国家管理」があります。
戦前は、陸軍省・海軍省が管轄。
戦後には、戦没者が「神霊」として祀られました。
趣旨と目的
政教分離の原則の趣旨・目的は大きく分けて以下の3つです。
- 信教の自由の保障
- 民主主義の確立
- 国家と宗教の適切な距離の確保
順に見ていきます。
1.信教の自由の保障を確保、強化する
国家と宗教を分離させることで、国民の信教の自由を保障しようとするもの。
国家が特定の宗教に寄り添うと、それ以外の宗教に対する差別や区別が進む恐れがあるため。
2.民主主義を確立、発展させる
宗教は絶対的価値観によって支配されており、民主主義の価値観とは共存できないという考え。
3.国家と宗教の適切な距離の確保
国家が特定の宗教にのめり込むと堕落してしまう傾向があるということ。
具体的な内容
こうした歴史的事実や教訓をふまえて、日本国憲法では以下の条文が記されています。
いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
出典:20条1項後段
国が特定の宗教団体のみに補助金を出したり、優遇措置を行うことを禁止しています。
※「政治上の権力」=「国家が行使すべき統治権」というのが憲法学上の通説
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしてはならない。
出典:20条3項
この規定は実際に政教分離の原則に関する裁判の時に問題になることが多いです。
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若(も)しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又(また)は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
出典:89条
こちらは財政面からの規定です。
政教分離原則の限界
国家と宗教の完全な分離は理想ですが、宗教は社会のさまざまな側面に接しており・・・
完全に分離することは不可能に近いのも事実です。
国が福祉国家として、宗教団体に対しても他の団体と同様の扱いをしなければならない場面があります。
例えば、
- 私立学校への補助金
(宗教団体が母体の学校にも補助金は出る) - 初詣
- 地鎮祭
これらのように国民の慣習となっている宗教行為も多くあります。
このような場合には目的と効果の2つに着目して政教分離に反するか否かを判断します。
- 行為の目的が世俗的なものであって宗教的なものでないこと
- 主要な効果が宗教を援助、助長する、または抑圧するものでないこと
以上の基準がクリアできれば、その行為は政教分離原則に違反しない=合憲と判断されます。
宗教団体を支持母体とする政党について
ここで問題になるのが、宗教団体を支持母体とする政党や政治団体の存在です。
例えば、
- 公明党・・・創価学会
- 幸福実現党・・・幸福の科学
などは有名ですよね。
>>>『創価学会と日蓮宗』違いと関係は?お題目【南無妙法蓮華経】に秘められた歴史
これらに関しては、一見、違反しているようにも見えますが・・・
宗教団体はあくまで支持母体であり「政党=宗教団体ではない」ということで問題ありません。
・・・まぁグレーゾーンな気もしますが汗
まとめ
政教分離の原則は、国家と宗教の分離のこと。
(政治と宗教の分離ではない)
国や地方公共団体が宗教団体に対して、
- 立法権
- 課税権
- 裁判権
- 公務員の任命権
などの統治的権力の付与を禁止するもの。
政教分離の原則は国家と宗教の関わりを全く許さないというものではないということですね!