シヴァ神とは・・・
インドで信仰されている宗教「ヒンドゥー教」の神様です。
世界を破壊する破壊の神として知られているシヴァ神ですが・・・
日本の神様と比べると本当に面白い神話や、生々しさすら感じるその成り立ちなど、知れば知るほど面白い神様です。
また日本で江戸時代以前から庶民に親しまれている『とある神様』も元々はシヴァ神なのですよ。
同じ神様なのに名前はおろか姿や役割がインドと日本では全然違うところがシヴァ神の面白いところです。
今回は、
シヴァ神とは|インドと日本での違いを分かりやすく解説
をお送りします。
ヒンドゥー教の神シヴァとは
シヴァ神はヒンドゥー教で最高神として崇められている三大神の一柱で、破壊を司る神様です。
ちなみにヒンドゥー教の三大神とは、以下の三柱。
- ブラフマー「創造」
- ヴィシュヌ「維持」
- シヴァ「破壊」
この三柱が宇宙を作り、維持し、そして破壊する・・・そのサイクルで世界が回っていると考えられています。
シヴァはヴィシュヌと並んで人気が高く、シヴァを最高神として崇めるシヴァ派と、ヴィシュヌを最高神として崇めるヴィシュヌ派の二つがヒンドゥー教の二大宗派として広く信仰されています。
(ブラフマーはなぜか人気がありません)
ヴィシュヌが豪華な衣をまとい、神々しい姿で描かれているのに比べるとシヴァの服装は虎の皮と腰巻だけ。
山のような形に結わえた螺髪からは水が滴り、首に蛇を巻き手には三叉戟を持っています。
神々しさというよりは、荒々しい印象を受ける姿ですね。
怒った時は額の目から炎を出して世界を焼き尽くし、打ち倒した悪鬼の上で世界が壊れんばかりにダンスを踊ります。
自身の息子である「ガネーシャ」の首を切り落として歩いていた象の首を切って息子にくっつけるという、荒々しさでは片付けられないような逸話も多いです。
その一方愛妻家で、妻であるパールヴァティには頭の上がらない可愛らしい一面もあります。
シヴァ神の成り立ちをわかりやすく
ヒンドゥー教は、アーリア人のバラモン教という宗教から聖典やカースト制度を引き継ぎ、インダス地方の先住民(ドラヴィダ人)が信仰していた土着の神々や崇拝様式を吸収して形成された宗教です。
シヴァはドラヴィダ人が崇拝していた土着の神様と、バラモン教の神様「ルドラ」が同化した神様です。
前身のルドラは暴風雨神で、二面性のある神様でした。
- 風害・水害をもたらす破壊神としての性質
- 雨でその土地を潤し動植物を育てる豊穣神としての性質
シヴァはルドラの二面性を受け継ぎ、破壊神としての荒々しい姿や逸話を持つと同時に、豊穣の象徴の性的象徴「リンガ」をシンボルとしています。
またシヴァは有色人種の原住民の神としての色を濃く残した姿をしています。
インダス地方の原住民とされるドラヴィダ人は有色人種で、インダス地方を征服したアーリア人は白人種です。
シヴァ神の青黒い肌は、実は青色ではなく黒色を表しています。
(黒は不浄の色として神様を描くのに適した色ではないので、ヒンドゥー教では青色で表現されています)
黒い肌は、有色人種ドラヴィダ人が信仰する土着の神としての見た目を強く残していると考えられます。
バラモン教は、このように土着の神を吸収して自分たちの神々と結びつけたことで、幅広い民衆に受け入れられ、インドの伝統宗教「ヒンドゥー教」として生まれ変わりました。
シヴァのシンボル「リンガ」とは
シヴァのシンボルとしてとても特徴的なのが「リンガ」と呼ばれる男根像です。
リンガは、シヴァの豊穣の神としての側面を強く表しています。
先ほどバラモン教の暴風雨神「ルドラ」と原住民の神が同化してシヴァになったとお話ししました。
これは同化した原住民の神が地母崇拝の一つである生殖器崇拝だったからと考えられています。
生殖器は生命を生み出す源であり、豊穣の象徴として崇拝されていました。
ルドラは元々豊穣神としての側面も持っているので、同じ豊穣の象徴としてリンガとルドラが同化したのも、なんとなく納得できますね。
ヒンドゥー教ではシヴァ神の象徴として生命を生み出す源、この世の根源としてリンガを崇拝しています。
日本でも男根像を御神体として祀っている神社がありますので、性器崇拝自体はそう珍しいことでもないのですが・・・
日本人から見て「えっ!?」と思ってしまうのはその崇め方です。
リンガ像は、舟形の器(ヨーニ)の上に、円柱型の男根像が乗っている形で作られています。
この舟形の器(ヨーニ)は女陰を・・・
シヴァの奥さんである女神パールヴァティを表しています。
信者たちはリンガ像に献花し、ギーと呼ばれるバターオイルや牛乳を注いで清め、崇めます。
合体しているリンガ像にオイルやら牛乳を注ぐというのは、ちょっとそれどうなの?と思ってしまいますが・・・
現地の方々はリンガを性的象徴とは全く思っておらず、シヴァ神のシンボルとして認識していて(当たり前ですが)不埒な考えはなく真面目に崇めています。
日本人からしたらちょっと信じられない感じがしますが、お土産用のキーホルダーや置物なども売られている非常にポピュラーな像です。
シヴァとパールヴァティが住むとされるカイラス山の事も「リンガ」と呼び崇拝しています。
カイラス山は現在入山が禁止されていますが、聖地としてとても有名な山です。
(ちなみに中国のチベット自治区にあります。インドの神様が中国の山に住んでいるなんて不思議ですね)
大きな岩の塊のようなカイラス山はとても神秘的で、数々の宗教で聖地とされているのも納得です。
日本での各種名前を解説
シヴァは仏教と一緒に、インドから中国へ渡り、名前と姿、その性質を変えて日本へと伝わりました。
いくつかありますが、今回は特に有名なシヴァ神の日本での名前と姿だけ解説させていただきます!
大黒天(だいこくてん)
七福神の一柱として有名な神様、大黒天は実はシヴァが前身です。
シヴァの異名の一つに「マハーカーラ(大いなる暗黒)」と言う名前があり、中国に伝わった際にその異名を「大黒」と訳されて大黒天の名称がつけられました。
中国から仏教が渡来したのと同時に日本に伝わり、読みが同じだったことから日本の神「大国主命(おおくにぬしのみこと)」と神仏習合し、七福神でお馴染みの大黒天として日本に広く信仰されています。
大国主はダイコクとも読める事から大黒天と神仏習合したと言われています。
大黒天にはシヴァの破壊神としての面は見受けられません。
福袋と打ち出の小槌を持った福々しいお爺さん姿で描かれ、豊穣の神として広い人気があります。
木彫り仏像 【大黒天(大黒尊天)】 柘植 高さ10cm 開運招福・五穀豊穣・商売繁盛
ちなみにシヴァ神は雄牛を使いとしていますが、大黒天の使いはネズミです。
大自在天(だいじざいてん)
仏教に取り込まれたシヴァは大自在天と呼ばれます。
大黒天は大国主と習合して、穏やかな豊穣の神へと変わりましたが、大自在天はシヴァの破壊神としての色を強く残した状態で仏教へ取り込まれました。
仏教に取り込まれたシヴァ神は欲深く、仏教に反抗した態度を取り、仏陀より自分こそがこの世界の主だと主張しました。
あまりの欲ぶかさを見かねた大日如来が降三世明王を使わし、降三世明王に踏みつけられて一度死に、欲望を持たない大自在天として生まれ変わったという逸話があります。
大自在天は、天界の中の「色界」に住む仏教の守護神です。
仏教では三つの世界に分かれていると考えられており、まとめて三界と呼ばれています。
所属する世界により、その神様がどの程度のランクなのかがわかります。
- 欲界(時々欲望にとらわれる世界)
- 色界(欲望は持たないが、肉体や物質に縛られている世界)
- 無色界(欲望・物質から解き放たれた最も上位の世界)
この三界それぞれにもランクが細かくつけられています。
大自在天は欲界の中の最高「色究竟天 しきくきょうてん」に住んでいるとされます。
かなり力のある神様ですね。
大自在天の真言(マントラ)は「オン・マケイシバラヤ・ソワカ」恋愛成就や復縁の力を持っているとか。
とはいえ、大自在天として単体で信仰されることはほとんどありません。
日本では大自在天としてのシヴァよりも、七福神の一柱である大黒天としてのシヴァの方が認知も人気も高いですね。
まとめ
- シヴァは三大神の一柱としてとても人気と力のある神様。
- 破壊を司る神様で、三つ目から火を噴き破壊のダンスを踊る。
- シヴァの前身はバラモン教の「ルドラ」が現地住民の地母崇拝「リンガ」を吸収して広まった。
- 肌の色が青い(黒い)のは有色人種ドラヴィダ人の特徴を濃く残しているため。
- 日本の七福神「大黒天」は「大国主命」と習合したシヴァの日本での姿
- 仏教のシヴァは一度死んで「大自在天」として生まれ変わった
ヒンドゥー教の神様は、シヴァ神に限らずヒンドゥー教徒でなければ理解しがたい所が多く見受けられます。
混沌として複雑で、破壊神・豊穣神としての二面性を持ち合わせる「シヴァ」のこと、青い肌のことなど、少しでも理解が深まったら嬉しいです。