ヒンドゥー教。
「名前は知っているけど・・・」という方は多いでしょう。
日本では認知が低めですが、世界的に見ると何と世界第三位の信者数を誇る宗教なのです。
- 第1位 キリスト教 22億人
- 第2位 イスラム教 16億人
- 第3位 ヒンドゥー教 9億人
- 第4位 仏教 4億人
私たちに馴染みの深い仏教は世界第4位。
ヒンドゥー教は倍以上の信者数を誇っていますから驚きですよね。
しかし、宗教圏が極めて狭いのも特徴のひとつ。
インド・ネパール・バングラディシュでしか信仰されていないので、残念ながら世界三大宗教からも外されています。
>>>【徹底比較】世界三大宗教とは|人口から共通点まで概要まとめ
牛肉が食べられない、食事に左手が使えない、階級制度がある・・・
などヒンドゥー教について、なんとなく知っている方はいると思います。
ただ、どんな神様がいるか、なぜ牛肉が食べられないのか、そもそもどうゆう宗教なのか詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。
今回は、
ヒンドゥー教とは|特徴を簡単に分かりやすく解説
をお送りします。
ヒンドゥー教の特徴
ヒンドゥー教は、バラモン教という宗教から聖典やカースト制度を引き継ぎ、土着の神々や崇拝様式を吸収し形成された宗教です。
カースト制度が他国で受け入れられにくい事もあり、インド以外ではあまり信仰されていません。
ヒンドゥー教はインドの伝統宗教、民族宗教とも言えます。
キリスト教やイスラム教、仏教のような始祖・経典を持っていません。
- 神様がたくさんいる
- 始祖や経典がない
これらの点では、日本の土着信仰である神道と似ていますね。
ヒンドゥー教の特徴一覧
- 多神教
- 宗派は大きく分けて「シヴァ派」と「ヴィシュヌ派」の二つ
- 身分・職業を含むカースト(ヴァルナ)制
- ガンジス川崇拝
- ベジタリアンが多い
- 厳しい食事の戒律や生物に対する宗教的思想
- 聖牛崇拝
- 輪廻転成・解脱を信じる
このように、かなり特徴のある宗教です。
では簡単に説明して行きます!
ヒンドゥー教の神様
ヒンドゥー教は、無数とも言えるほどに神様の数が多い宗教です。
その中でもブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァを三大神として信仰しています。
ブラフマーが世界を創造し、その世界をヴィシュヌが繁栄させ維持します。
世界が間違った方向へ進めばシヴァが世界を破壊します。
そしてまた三大神が新たに世界を創造・維持・破壊。
このサイクルで世界が回っていると考えられています。
ブラフマー(創造の神)
この世の全てを作ったとされる創造の神。
4つの顔を持ち、それぞれの顔は四方を向いています。
形而上および現実に存在する全てに対して、実存する為の縁起を与えています。
神であれ、人であれ、実存しているものは全てがブラフマーの力に依存しているのです。
神すらブラフマー無くしては存在し得ないという、ものすごい力の神様ですが・・・
三大神の中でブラフマーだけ人気がありません(笑)
「宇宙の根本原理」「神学的哲学の根源」という抽象的な存在のため、レリーフや絵画やブラフマーを祀った寺院はとても少ないです。
宗派も三大神の中でブラフマー派はないんです。
世界を創っているのに、人気がないなんてちょっとかわいそうですね・・・
ヴィシュヌ(維持の神)
世界の維持・繁栄を司る神様。
世界を三歩で踏破する自由闊歩の神とされ、世界の果てまで届く太陽光線の神格化です。
ヴィシュヌは化身(アバターラ)として人間世界に生まれ変わり、人々を救済すると信じられています。
ヒンドゥー教ではクリシュナや、インドの叙事詩の主人公のラーマ、釈迦も数ある化身の一つです。
化身にはヴィシュヌ神としての自我は無く、それぞれの自我を持ちます。
ヒンドゥー教では釈迦は釈迦でも本当は釈迦ではなく、ヴィシュヌ神の化身という考え方です。
ヒンドゥー教を信仰していなければ、ヴィシュヌ神のアバターラについての解釈の理解は難しいですね・・・
少なくとも私にはわけがわかりません!
シヴァに並びヒンドゥー教では非常に人気が高い神様です。
シヴァ(破壊の神)
世界を破壊する神。
両目の間には第三の目が開いており、彼が怒る時には激しい炎が出て、全てを焼き尽くします。
青黒い肌に虎の毛皮身につけ、短い腰巻を纏った苦行者(サドゥー)の姿をしています。
シヴァはヨガ・瞑想・芸術の守護神でもあります。
荒れ狂う様なダンスを踊っている絵画や、静かに瞑想をしている偶像などがとても多いのが特徴です。
壁画や絵画などではシヴァは青い肌で描かれていますが、シヴァの肌は黒色。
なぜ青色で描かれているのかというと、黒はヒンドゥー教では不浄の色とされているからです。
神様を描くには相応しくないため、シヴァの肌色は青で表現されています。
シヴァは牡牛のナンディンに乗っています。
シヴァの乗り物である牛を、ヒンドゥー教では神聖な生き物として崇拝しています。
ヒンドゥー教の宗派
ヒンドゥー教はシヴァ系とヴィシュヌ系の二大宗派化しています。
色々な宗派がありますが、この二つの宗派がほとんどを占めているので割愛させていただきます。
ヴィシュヌ系
ヴィシュヌ派は、ヴィシュヌ神とその化身(アバターラ)を最高神として崇拝しています。
化身であるクリシュナやラーマなどの物語・叙事詩を通じて、人間のあるべき道を問い、理想的な社会を追求するといった規範的な宗教観が軸になっています。
苦行や道徳の説法より、社会的地位に従った世俗の義務を重要視しています。
そのため上流階級に受け入れられやすいもののようで、ヴィシュヌ派は上流階級の人が多いです。
あの有名なガンジーもヴィシュヌ派に属しています。
シヴァ派
シヴァ派は、シヴァを最高神とした信仰のグループです。
苦行・呪術・祭礼・踊り等を特色とし、ヴィシュヌ派とは反対に下層階級の人が多い宗派です。
ヒンドゥー教の宗派は、シヴァかヴィシュヌのどちらを最高神として崇めているかという違いであり、お互いの存在を否定・排除することはありません。
そのため宗派間での宗教的な争いは起こらないのです。
カースト(ヴァルナ・ジャーティ)制度について
カースト制度とはヒンドゥー教の前身、バラモン教から引き継がれた身分制度です。
アーリヤ人がインドに移住してきた際に、征服層が3つのヴァルナを作り、先住民を下位のヴァルナとしたことがその成り立ちです。
作られた当初はかなり支配的な意味で作られた制度ですね。
ちなみに今の中学生の教科書にはカースト制度ではなく、ヴァルナ制度と載っています。
カースト制度と習った方は、ぜひヴァルナと覚え直してください。
※正式名称はヴァルナ・ジャーティ制度ですが、長いので以降はヴァルナ制度で統一します。
現在のヴァルナ制度は4つの身分+αで分けられています。
上から、
- バラモン(司祭)
- クシャトリヤ(王族・武士)
- ヴァイシャ(一般市民)
- シュードラ(奴隷)←ここまでがヴァルナ制度の身分
- アチュート(不可触民)←ヴァルナ制度の枠組みに入っていない。人間以下とされる
です。
ヴァルナは親から子へ世襲されるもので、生まれた後に努力や善行などで身分を変えることはできません。
現在の人生で徳を積むと、生まれ変わった時により高いヴァルナに上がることができるとされています。
ヒンドゥー教の聖地とガンジス川崇拝について
ヒンドゥー教の聖地は、多くがガンジスの源流域にあります。
ガンジス源流域にある寺院の中でも、聖地として有名なのは以下四つの寺院です。
- 第一の聖地 ヤムノートリー
- 第二の聖地 ガンゴトリ
- 第三の聖地 ケダルナート
- 第四の聖地 バドリナート
この四つの聖地は、ヒンドゥー教徒が死ぬまでに行きたい聖地としてとても有名です。
外国人にも有名で人気があり、この四つの聖地をめぐるツアーも存在します。
しかしヒンドゥー教徒にとっては、もっと特別な意味を持つ聖地があります。
特別な聖地バラナシ
インドのバラナシが、ヒンドゥー教徒にとって最も特別な聖地です。
聖なるガンジス川へ沐浴(もくよく)するためにインド各地から巡礼者が訪れます。
先ほどの四つの聖地は「死ぬまでに行きたい聖地」でしたが、バラナシは「死ぬための聖地・死んでからの聖地」と言えます。
ヒンドゥー教では、命を終えると輪廻転成すると考えられています。
その輪廻転成には大変な苦痛が伴い、人は永遠に続く輪廻転成に耐えなければなりません。
バラナシのガンジス川付近で死んだ者は、輪廻転成の苦しみから解き放たれる(解脱できる)と考えられています。
そのため、バラナシには毎日インド各地から遺体が運ばれてきます。
遺体だけでなく死期の近い人が死を待つために滞在する施設すらあるほどです。
ヒンドゥー教における輪廻とは
ヒンドゥー教では輪廻を教義の根幹としており、信心と業(カルマ)によって次の輪廻(来世)の宿命が定まるとされています。
具体的には、カースト(身分)(ヴァルナ)の位階が定まることです。
生き物は、行為を超越する段階(解脱)に達しないかぎり、永遠に生まれ変わり、来世は前世の業(行為(カルマ))によって決定されます。
これが、因果応報の法則(善因楽果・悪因苦果・自業自得)として考えられています。
バラナシには「大いなる火葬場」と呼ばれる火葬場が2箇所あり、24時間火葬の煙が途絶えることがありません。
多い日は100体近い遺体がこの地に運び込まれ、火葬され遺灰をガンジス川へ流します。
ただ、全員が火葬されるわけではありません。
子供や若くして死んでしまった人など、いわば道半ばで死んだ人は火葬せずに重しをつけてガンジス川へ沈められます。
輪廻転成から解脱する資格のある人だけが火葬され、遺灰をガンジス川へ流されるのです。
食事の戒律について
ヒンドゥー教の信者が多いインド・ネパールでは、宗教が生活の土台となっています。
食べてはならない食材は数多くありますが・・・
その他、誰と一緒に食べるか、何を使って食べるかなど大変細かい戒律があります。
穢れ(けがれ)に対する意識が強く、食材のみならず、食器や調理器具を介して「穢れ」が感染するという思想もあります。
禁じられている食材や命に対する宗教的思想により、ベジタリアンが多いのも特徴です。
牛は神聖な生き物
ヒンドゥー教の食事で有名なのが牛に対するタブーです。
なぜ牛がタブーなのかというと、シヴァがナンディという牝牛に乗っているからです。
牛は神様の乗り物なので、ヒンドゥー教では「神聖視」されています。
そのため牛肉を食べる事や殺す事は禁じられています。
また牛肉そのものだけでなく、出汁や脂肪が入っている加工品も避けます。
- ブイヨン
- ゼラチン
- 肉エキス
- バター
- ラード
これらが入っている料理もNGです。
魚介類・卵もアウト!
聖地の項で触れましたが、ヒンドゥー教では輪廻転成の考えが教義の根底にあります。
生き物は「先祖の生まれ変わりの可能性がある」ため基本的に食べません。
ただ、鶏や羊・ヤギはインドカレーのお店でもメニューがあるように、現地でも食べられています。
ヒンドゥー教徒は外食をあまりしないそうなので、外国人向けのお店なのかもしれませんが・・・
上位層の人々は厳格に戒律を守っている人が多く、ベジタリアンが多いようです。
野菜もダメなものがある
ここまで読んで、
「野菜もダメなんてじゃあ何を食べているの?」
と何でも食べる日本人の我々は不思議に思ってしまいますよね。
ダメな野菜は五葷(ごくん)と呼ばれる5種類の野菜だけ。
ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキなどのニオイの強い野菜は食べることを禁じられています。
これらの野菜は興奮剤の一種とされ、平常心での修行を妨げる物とされています。
食材以外の食事に関する戒律について
非常に食事に関しての戒律が厳しいことは十分わかりましたよね。
でも食材以外の、食事に関する色々なことがさらに戒律で決められています。
- ヴァルナが違う人とは一緒に食べない
- 基本的にスプーンなどは使わず手(右手)で食べる
- 左手は不浄の手であるため、食事には絶対使わない
- 人が口をつけたものは穢れがあるので食べない
- 誰が作ったかわからないものは食べない(外食はあまりしない)
食事の戒律を考えただけでも、「ヒンドゥー教は他地域に(特に日本では)広まらないだろうな・・・」と思ってしまいますね。
まとめ
- ヒンドゥー教はバラモン教がインド土着の神や崇拝形式を吸収して生まれた宗教
- 三大神はブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァ
- 二大宗派だが、宗派間での争いはない
- ヴァルナは生まれた後の努力では変えることができない
- 輪廻転成を教義の根源としている
- 最大の聖地はバラナシ
バラナシで火葬されガンジス川に遺灰を撒いてもらうと輪廻転成から解脱できる - 食事にとても厳しい戒律がある
食事の決まりやヴァルナ制度など、日本人からしたら受け入れ難いほどの厳しさがある宗教ですね。
インドでは国民のほとんどがヒンドゥー教を信仰しています。
インドに旅行へ行く時や、インド人の方と接する時には多少の知識を入れておくと良いでしょう。