実は日本三大宗教のひとつとも言われる儒教。
常識として知っておきたい日本の三大宗教―神道・儒教・日本仏教 (KAWADE夢文庫)
※諸説あります。
みなさん知っていましたか?
「神道や仏教に比べ、儒教はほとんど私たちの生活に根付いていない」と思いますよね?
「むしろクリスマスのあるキリスト教の方が影響あるんじゃ」なんて。
しかし!
実際のところは違うんです。
【あるもの】を通して、儒教の思想も私たちの思想や生活に根付いているんです。
その【あるもの】とは…ズバリ仏教。
儒教と仏教。
この2つには非常に大きな『違い』があります。
この違いがあるため、仏教を通して儒教が私たち日本人の思想にある影響を与えた、と言っても過言ではないと思います。
その違いとはズバリ『死生観』
この2つを分かつ最大のポイントです。
その他にも、どのような違いがあり、どのような影響を与えたのか。
基本データをおさらいしながら解説していきます。
ということで今回は、
日本に息づく儒教の思想|仏教との大きな違いとは?
をお送りします。
儒教と仏教の基本データ
まずは簡単に儒教と仏教の基本データを見てみましょう。
教義に関しては、きちんと詳しく知りたい人は…Wikipediaを見てください(笑)
それではまず儒教からです。
儒教の基本データ
まず、儒教を紹介する上で必ず直面する問題があります。
それは「儒教が宗教か否か」です。
この問題は人によって意見が異なりますが・・・
今回は宗教として扱っていきたいと思います。
成立年
紀元前5世紀頃。
中国の春秋戦国時代にあたります。
開祖
開祖としては、孔子があげられます。
孔子は「儒教の開祖」よりも、『論語』の人として有名ですね。
ちなみによく間違われているのですが、『論語』は孔子とその弟子の言行を孔子の死後、弟子によってまとめられたものです。
決して孔子が書いた訳ではありません。
教義
『【五常】と呼ばれる徳を守り、【五倫】と呼ばれる5つの人間関係を円滑に持続させましょう』というものです。
【五常】
- 仁…人を思いやる事
- 義…利欲に囚われず、世のため人のため、正義のために行動する事
- 礼…自分を謙遜し、相手に敬意をはらって行動する事
- 智…知識を得て、道理を知り、善悪を理解する事
- 信…人を欺かず、人に信頼されるよう行動する事
他人を思いやり、私利私欲に走らず、常に相手を敬い、勤勉に学び、信頼される人間になりましょう、っていう感じですね。
【五倫】
- 父子…父子の間には【親愛】がある。
→親は子を愛し、子は親に敬意を払いましょう
- 君臣…君臣の間には【礼儀】がある。
→君子と臣下は水と魚のような密接な関係でありましょう
- 夫婦…夫婦の間には【区別】がある。
→夫と妻、それぞれの役目を全うしましょう - 長幼…長幼の間には【序列】がある。
→年少者は長者を敬い、長者は年少者を慈しみましょう
- 朋友…朋友の間には【信義】がある。
→友達とは信じ合い付き合いましょう
簡単に言えば、色々な人間関係がありますが、立場をわきまえ、目上・年上の人を敬い、年下・目下の人を可愛がりましょう、というものです。
さらには、五常を守り、五倫を持続する事が出来れば、いい世の中が出来るはず、と孔子は説いています。
教典
四書、五経。
以上が儒教の基本データです。
続いては仏教の基本データです。
仏教の基本データ
世界三大宗教のひとつであり、日本においては神道に次ぐ宗教人口を誇ります。
>>>【徹底比較】世界三大宗教とは|人口から共通点まで概要まとめ
成立年
紀元前6〜5世紀です。
開祖
言わずと知れたガウダマ・シッダールタ。
ちなみに仏陀(ブッダ)とは「目覚めた人」という意味です。
教義
悟りを開き、輪廻転生から解脱する事を目的としています。
そのため、正確には信仰対象となる神様はいません。
しかし、伝来の途中で、信仰対象となるものがあった方がわかりやすいので、仏陀やその他の仏、如来を信仰の対象としました。
教典
経典。
この2つの基本データを見る限りでは違いというよりも、むしろ共通点が見当たらないレベルですよね(笑)
しかし、『宗教として』2つを比較した時、これらの違い以上の明確に異なる点があるのです。
孔子以前の【儒】は葬儀屋さん的な集団だった
ここで一度また儒教の紹介に戻ります。
儒教の基本データで開祖を孔子としました。
ですが孔子以前に【儒】という葬儀屋さん的な集団が存在していました。
シャーマン的な役割も担っていたと思われれます。
この儒の思想や儀礼などを元に孔子が教義を体系的にまとめていったのです。
儒の基本思想はこの通りです。
- 死者の魂はあの世で生きており、先祖はいつも私たちを見守っていてくれる(祖霊信仰)
- 死者の魂はあの世で生きているので、呼べばいつでも再生できる(招魂再生)
はい、もうお分かりですよね。
儒教と仏教の大きく異なる点、それは【死生観】です。
異なる死生観から生まれた中国仏教
儒教と仏教の死生観を並べるとこうなります。
- 儒教の死生観…死んでも魂だけはあの世にずっと残り、見守っている
- 仏教の死生観…一度死んでも、何度も生まれ変わってしまう(=輪廻転生)
その際は生前の意識は当然残っていない
仏教の死生観も分かりますが、儒教の方もなかなかしっくり来ますよね。
この儒教の死生観が一番よく反映されているのが「お盆」です。
仏教が取り入れた盂蘭盆(=お盆)
盂蘭盆(=お盆)とは、先祖の魂があの世から帰り、そしてまたあの世へ帰っていくという仏教の行事ですね。
なすの牛ときゅうりの馬を飾るやつです。
しかし、もう儒教の死生観まんまですよね。
仏教では輪廻転生をしますので、先祖の魂が未だあの世にいるなんて事はない訳です。
どうしてこのような事が起こったのでしょうか。
これは仏教が中国に浸透していくために、当時の中国で一般的だった儒教の思想を取り入れ、『盂蘭盆経』なる偽経を作り上げてしまったからなのです。
偽経というのは、インドの原典にはなく、中国で新たに作られた、もしくは漢訳する際に中国的思想を取り込んだ経典のことですね。
まさに、盂蘭盆は儒教の思想を仏教が中国で取り入れたものだったのです。
そしてその状態で日本にやって来たので、日本では仏事として扱われているんです。
しかしその実…仏教の思想とは相反していますよね(笑)
さらにもうひとつ。
位牌
位牌とは、個人の戒名や法名を記した木の板です。
この由来には諸説ありますが、その中のひとつが儒教に由来するものです。
儒教では、招魂の儀式の際に魂と肉体が依り付く板が使用されていました。
これを依代といいます。
この依り代が仏教の卒塔婆と合わさり、位牌となって仏教とともに日本にやってきたと言われています。
その他、葬式や墓も儒教に由来しているという説もあるんですよ。
結構色々とあるのが面白いですよね。
まとめ
実は身近に根付いていた儒教。
いや、正確に言えば儒教を取り入れた仏教、になる訳ですが…。
でも、そうやって日本にやってきて、現在までその思想が残っているのが面白いですよね。
まだまだ儒教がルーツのもの、あるはずです。
調べてみるのも楽しいかもしれませんよ♪