みなさまご存知『数珠(じゅず)』
数珠は、私たちにとって最も身近な法具です。
数珠自体を知らないという人はあまりいないですよね。
そう、仏教徒でなくとも日本に住んでいれば、大抵の人が知っています。
しかし、『数珠を手に掛ける意味』をきちんと知っているという人は、一体どのくらいいるでしょうか。
あなたはきちんと答えられますか…?
ということで今回は
数珠の意味まとめ【深い歴史】と【ありがたい由来】がそこに
をお送りします。
数珠の歴史とその意味
その歴史は長く、由来には諸説が存在しています。
その中でも有力な説としては、古代インドの宗教「バラモン教」の聖典「ヴェーダ」に出て来る毘沙門天、弁財天、梵天の持ち物『連珠に由来する』のではないかと言われています。
その後、「バラモン教」は「ヒンドゥー教」へと発展しますが、「ヒンドゥー教」では、『数珠で祈りの回数を数える』という習慣があり、それを釈迦が仏教に取り入れ、中国にわたりました。
そう、数珠は『念珠』とも呼ばれ、元々は祈り(念仏)の回数を数える法具だったのです。
日本における数珠の伝来
日本には、仏教とほぼ同時期に百済からわたってきたとされています。
しかし、当時の数珠は、金や銀などとても高価な材料で出来ており、一部の貴族や僧侶などしか手に出来ませんでした。
鎌倉時代に入ると、『鎌倉仏教』と呼ばれる民衆の仏教が流行し、それに伴い、一般庶民にも少しずつ普及。
さらには各宗派に合わせた形へと変化していき、現代の数珠の形がほぼ完成します。
この頃には、念仏の数を数える法具としてのみではなく、礼拝用の法具としての儀式的要素も重要視され始めました。
仏の前で、数珠の珠を爪繰りながら念仏を唱えることにより、煩悩が消滅し、功徳が積めると考えられたのです。
現代における数珠の役割
現代では、数珠の種類は各宗派によって異なり、おおよそ70種類ほどもあると言われています。
確かに、一口に仏教と言っても、その宗派は数えきれない広がりを見せていますからね。
現代においては、主に礼拝用の法具として使用されています。
通夜や葬式で故人に合掌をする際や、寺に参詣し仏に合掌する際に、敬意や畏敬を表すため用いられます。
そのほかにも、数珠が煩悩を消滅させ、心をよりよい方へ導いてくれるとの事から、厄除けやお守りとして身につける人も多くなってきていますね。
数珠の種類
正式念珠
宗派ごとに形式が異なる正式な数珠のことを『正式念珠』と呼びます。
煩悩の数である108つの珠からなる長いものが多く、通常は二重にして使用されるため、『二輪数珠』などとも呼ばれます。
宗派ごとに厳密な決まりがあります。
購入の際は、自分の宗派をきちんと調べた上で購入しないと・・・
「この異教徒が!!」と言われないまでも(笑)、恥をかいてしまいますので注意が必要ですね。
例:真言宗の正式念珠がコチラ。
例:日蓮宗になるとこうです。
うーん、似ているようで全然ちがいますね~!
略式念珠
宗派を問わず使用できる数珠のことを『略式念珠』と言います。
正式念珠に比べ小さく、そのぶん珠のひとつひとつが大きくなっています。
珠の数は本来、54から18程度で作られますが、現在では珠の数にこだわらず、使いやすさなど、実用的なメリットを考えてつくられる事が多いです。
葬式でマナーとして持参する場合、宗派を問わず使用できる、この略式数珠を持参する方が多く見られます。
数珠のつくり
珠の構成
『数珠』の珠には全て意味があります。
こちらも宗派によって個数など違いはあるものの、以下がおおまかな構成です。
1. 親玉
房の根元についている玉。
数珠の中心であり、釈迦如来あるいは阿弥陀如来を表します。
2. 主玉
108個の玉。
百八尊または百八煩悩を意味し、菩薩の修行過程を表します。
3. 四天王・四菩薩
主玉の間にある4個の小さい玉。
その名の通り、以下の四天王を表します。
- 持国天
- 広目天
- 増長天
- 多聞天
四天王ではなく、四菩薩を表す場合も。
- 観世音菩薩
- 弥勒菩薩
- 普賢菩薩
- 文殊菩薩
4. 弟子玉・記子玉
房についている小さい玉。
十大弟子と十波羅密、十大弟子と十大菩薩などに解釈されます。
5. 記子止・露玉
弟子玉の下についているしずく形の玉。
弟子玉あるいは記子玉を留めるための玉です。
6. 浄明
親玉のすぐ下、房の一番上のある小さい玉。
記子玉の補欠のような役割。
別名「補処(ふしょ)の菩薩」とも言います。
7. 中通しの紐
玉を繋ぐ紐。
観音菩薩を表しています。
珠の材質
古く『数珠』はムクロジと言われる木の実で作られていましたが、礼拝用に使用されるようになるにつれ、香木や見た目のよい天然石などが好まれ、使われるようになりました。
現代ではブレスレットタイプなどもあり、今まで使用されていなかった天然石など新しい材質も使用されるようになってきました。
「種類が多過ぎて、どれを選んで良いか分からない!」という人は、略式念珠であれば、自分の好きな色やセンスで選んでしまって構いません。
基本的に葬式に持参してはいけない「色」の『数珠』はありませんが、東海地方や北陸地方では、水晶や白珊瑚などの無色の珠と白い房を使用する事が多いなど、地域によっても特徴は存在します。
気になる方は、迷ったら親戚や両親に聴いてみると良いかも知れませんね。
数珠の材質一例です。
- 木の実…金剛菩提樹、星月菩提樹、鳳眼菩提樹など
- 木…黒檀、紫檀、梅など
- 香木…沈香、白檀、伽羅など
- 天然石…水晶、ラピスラズリ、瑪瑙など
- その他…ガラス、樹脂、セルロイドなど
こちらは水晶のものです。
↓
房の種類
『数珠』の房はおおまかに、
- 切り房
- 梵天房
- 頭付房
- 紐房
などがあります。
正式数珠では、宗派によって房の種類が決まっている場合があります。
しかし、略式数珠の場合は、房のバリエーションの中から選ぶ事が出来ることが多いです。
数珠の持ち方
正式数珠は各宗派によって、持ち方も異なります。
略式数珠の場合は『左手に掛けて右手を添えて合掌する』か、『両手に掛けて合掌する』のどちらかです。
また、数珠を持って移動する際は、房を下にして左手に持って移動します。
これは、仏教において、
- 左手は不浄さを持っている自分自身・衆生
- 右手は仏など清らかなもの
を表しているからです。
つまり、左手=不浄さを持っている自分自身で数珠を持つ事によって、少しでも自分自身をよい方へ導いていただけると考えられているためです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
普段何気なく目にしている数珠ですが、歴史は深く、珠や紐などそのすべてに意味があります。
さらに、それぞれの珠や紐で、如来や菩薩を表しているとなると、今後は数珠を持つ際、厳かな気持ちになりそうではないですか?
この気持ちこそ、大切なものなのかもしれません。
今一度、背筋を伸ばし、数珠を手にしてみませんか?