世界で16億人以上もの信者数を持ち、世界三大宗教にも数えられるイスラム教。
このイスラム教について、二大派閥スンニ派とシーア派の違いを踏まえながら、分かりやすく簡単にまとめました。
あわせてチェック
イスラム教とは
概要
- 正式名:イスラーム
- 崇拝:アッラー
- 神:一神教
- 開祖:ムハンマド
日本では「イスラム教」という名称が一般的ですが、正確には「イスラーム」と言います。
イスラム教はユダヤ教、キリスト教と同じく「唯一神信仰宗教」であり、「アッラー(アッラーフ)」を唯一無二の神として、信仰の対象にしています。
「五大預言者」のひとり、ムハンマドが開祖となって広められた宗教です。
五大預言者
- ノア
- モーセ
- イエス
- アブラハム
- ムハンマド
日本ではあまり馴染みのない宗教であるイスラム教ですが、世界的にみるとキリスト教に次いで信者の多い宗教です。
※信者数は約16億人。
イスラム教の二大宗派|スンニ派とシーア派
イスラム教にも宗派があり、中でも二大宗派と呼ばれる宗派があります。
「スンニ(スンナ)派」と「シーア派」です。
割合はスンニ派が約90%、シーア派が約10%と、圧倒的にスンニ派の方が多いです。
シーア派がイラン、イラクを中心に分布しているのに対し、スンニ派はそれ以外の中東地域に分布しています。
スンニ派とシーア派の違い
スンニ派とシーア派の違いを簡単にまとめると以下の通りです。
スンニ派 | シーア派 | |
信者数割合 | 約90% | 約10% |
後継者 | 血縁を問わず | 血縁重視 |
教え | コーラン/ハディース | コーラン |
一日の祈りの回数 | 5回 | 3回 |
両者の違いは、それぞれがどのように分派したのかを知ると理解し易いと思います。
詳しく見ていきましょう。
分派した経緯
スンニ派とシーア派に分かれたきっかけは、ムハンマド死後の後継者争いでした。
ムハンマドの死後、最初のうちはムハンマドと血縁関係のない人が後継者として「カリフ(代表者)」に選ばれていました。
しかし4代目の後継者を選ぶ際に、3代目の息子と、ムハンマドと血縁関係をもつ人物の間で対立が起こったのです。
ムハンマドの血縁者が4代目を引き継ぐことをきっかけに、スンニ派とシーア派が分かれてしまいました。
思想の違い
シーア派は、ムハンマドの血縁者こそ後継者に相応しいと考えます。
対してスンニ派は血縁は重視せず、ムハンマドがどのような生活を送っていたか(スンナ/慣行)を重要視します。
ムハンマドの言行をまとめた「ハディース」というものから読み解かれており、コーランに次ぐ教えとして認識されているのです。
ただし、教義は唯一神であり、コーランを経典とすることが共通していて、両者に大きな違いはありません。
日本で例えるなら…
浄土宗と曹洞宗など、大きく教義が異なる別の宗派というよりも、浄土宗の中の分派、鎮西派と西山派くらいの違いだと言えるでしょう。
スンニ派とシーア派の対立
同じイスラム教の両派閥ですが、これまでにも宗派間の争いは起こっていて、有名なものだとイラン・イラク戦争、シリアの内戦などが挙げられます。
これらの対立の原因は、宗派の教義上の違いなどではありません。
少数派のシーア派が虐げられてきたということに起因しています。
現在イスラム教徒の大半はスンニ派です。
イスラム圏の国々はスンニ派が統治していることが多く、シーア派はたびたび虐げられ、貧困層となってしまうことが多かったのです。
しかしイラン革命が起こってから、イランはシーア派が統治することになりました。
こうなると他のイスラム圏の国々は「イランが革命を輸出するのでは?」と警戒するようになります。
逆にシーア派は反政府活動を団結して行うようになり、現状を改善しようとします。
このようにスンニ派とシーア派は対立し、内戦などの宗教対立を引き起こしてしまうのです。
イスラム教とテロの関係
イスラム教のイメージに必ず付き纏うのがテロの問題です。
このテロを行う組織の大半は「スンニ派」に属しています。
「16億人もの信者数がいるイスラム教徒の9割がスンニ派だと、かなりの数のテロ予備軍がいるの?」
と心配する人もいるかもしれませんが、そうではありません。
あくまでスンニ派に属しているだけで、スンニ派全員がそうではありません。
ごく一部の過激な思想をもったイスラム教徒がテロを行っているだけです。
これもまた、日本で考えてみれば分かりやすいでしょう。
テロを起こすまでの過激な宗派はありませんが、新興宗教の各派団体は、仏教を基にしている団体も数多くあるのです。
これらはあくまでも一例です。
実に多くの新興宗教団体として派生しているのが分かりますね。
ちなみに、非公式国家であるイスラム国を主張する団体は、もとはアルカイダという集団の一部でした。
しかし、あまりに過激な行動にアルカイダからも破門にされています。
まとめ
イスラム教は、大多数を占めるスンニ派と少数のシーア派の2つに大別することができます。
スンニ派 | シーア派 | |
信者数割合 | 約90% | 約10% |
後継者 | 血縁を問わず | 血縁重視 |
教え | コーラン/ハディース | コーラン |
一日の祈りの回数 | 5回 | 3回 |
スンニ派とシーア派の対立が内戦などを引き起こすことがありますが、多くの原因は少数派のシーア派が虐げられてきたことや、国家ぐるみの利権が絡んでいることが多くあるのです。
テロとイスラム教の関係は、あくまでごく一部のイスラム教徒の行いでしかありません。
「イスラム教徒=やばい」という考えは間違いです。