日本の仏教には、多くの宗派が存在しています。
現代にも引き継がれている、日本の伝統仏教の宗派は「13宗」と言われています。
その宗派の一つである真言宗は、日本仏教の中でも、特に多くの宗派に分派しているということでも知られています。
真言宗について、詳しく説明していきます。
真言宗とは
真言宗は空海(くうかい)を開祖とする、仏教13宗のうちの1つです。
この空海とは「弘法も筆の誤り」で有名な、「弘法大師(こうぼうだいし)」のこと。
真言宗は現在、真言宗〇〇派というように、さらに細分化されました。
主要なものだけで「18もの本山」に分派しています。
これらの本山のことを「真言十八本山」と呼びます。
真言宗は当初、高野山金剛峯寺を修禅の道場としました。
そして後に、空海は自らが管理していた寺を弟子たちに渡しました。
さらに寺は弟子から弟子へ引き継がれました。
金剛峯寺と東寺を兼任し管理していた観腎(かんげん)が「東寺が本寺、金剛峯寺が末寺」と定める「本末制度」を導入したのです。
真言宗の18宗派と本山一覧
真言宗は現在、真言十八本山に分かれています。
なかでも宗派ごとに大きく3つへ分類されます。
ポイント
- 古義真言宗:13派
- 新義真言宗:3派
- 真言律宗:2派
1.古義真言宗系13宗派と本山
- 教王護国寺 - 東寺真言宗総本山
- 金剛峯寺 - 高野山真言宗総本山
- 善通寺 - 真言宗善通寺派総本山
- 随心院 - 真言宗善通寺派大本山
- 醍醐寺 - 真言宗醍醐派総本山
- 仁和寺 - 真言宗御室派総本山
- 大覚寺 - 真言宗大覚寺派大本山
- 泉涌寺 - 真言宗泉涌寺派総本山
- 勧修寺 - 真言宗山階派大本山
- 朝護孫子寺 - 信貴山真言宗総本山
- 中山寺 - 真言宗中山寺派大本山
- 清澄寺 - 真言三宝宗大本山
- 須磨寺 - 真言宗須磨寺派大本山
2.新義真言宗系3宗派と本山
- 智積院 - 真言宗智山派総本山
- 長谷寺 - 真言宗豊山派総本山
- 根来寺 - 新義真言宗総本山
3.真言律宗系2宗派と本山
- 西大寺 - 真言律宗総本山
- 宝山寺 - 真言律宗大本山
非常に複雑な分派をしていることが見て取れますね。
こうやって並べてみると、古義真言宗の分派が多いのがわかります。
真言宗内での各宗派の違いとは
同じ真言宗の場合、大きく思想が異なることはありません。
ちょっとした作法や、お経を読むイントネーションが違うと言った程度の微妙な違いはりますが、一般の人からしたら違いはわかりにくいものです。
ただ各宗派の成り立ちを考えると、ちょっとした違いは見えてきます。
古義真言宗と新義真言宗|成り立ちと分派の流れ
現在の真言宗は大きく、「古義真言宗」と「新義真言宗」に分けることができます。
古義とは「古い教義」で、逆に新義とは「新しい教義」という意味です。
その言葉から分かるように、真言宗が日本に普及した当初の教義を重んじているのが、古義真言宗で、古義真言宗から分離したのが新義真言宗です。
真言宗の総本山となっている東寺と、修禅の地として真言宗が始まった金剛峯寺は、同じ僧が管理していました。
ですが、11世紀末に覚鑁が金剛峯寺の独立を図りました。
そして東寺から金剛峯寺は独立し、覚鑁が金剛峯寺の座主となるのです。
しかし、そこで覚鑁は新義を唱え、金剛峯寺のあった高野山で布教しようと考えたのです。
ただ金剛峯寺の他の僧から反発を受け、覚鑁は金剛峯寺の座主を辞し、根来山に隠居することとなります。
このことがきっかけで、「古くからの教義を重んじる金剛峯寺」と、「覚鑁の流れを汲む大伝法院」に、派閥抗争が生まれ、古義真言宗と新義真言宗に分かれることになってしまったのです。
古義を重んじた「金剛峯寺」は現在、「高野山派」の総本山になっています。
また新義を重んじた大伝法院が根来山に移り、根来寺ができました。
しかし根来寺は豊臣秀吉に焼き討ちにされてしまいます。
この焼き討ちから逃げた僧が新義真言宗を、長谷寺で広めたことから、後に長谷寺が「豊山派」の総本山となっています。
また根来寺にあった智積院を京都に再建して、後に智積院は「智山派」の総本山となっています。
歴史的な経緯から考えると、新義真言宗が始まった当初の流儀を1番色濃く引き継いでいるのが、豊山派ではないでしょうか。
古義真言宗と新義真言宗の違い
さて、そうなると気になるのが「古義と新義の違い」ですが、分かりやすい説明があったので、引用させて貰います。
古義真言宗では、ただひたすら「念仏」を唱えていれば、大日如来が現れて教えを説いてくれる・・・と言うもの。
新義真言宗では、念仏を唱えるだけではなく、三蜜加持によって、大日如来が加持身となって教えを説いてくれる・・・と言うもの。
引用:OKWAVE
「大日如来」とは真言宗において、最も上位の仏と位置づけられている信仰の対象です。
「三密加持」とは「印を組み、念を唱え、心を仏に向ける」という3つの「行」を行うことです。
「大日如来が加持身となって教えを説いてくれる」とは、自身のなかに大日如来が現れ教えを説いてくれるということです。
つまり、古義、新義の違いは、
古義新義の違い
- 修行の作法が違う
- 大日如来が教えを説いてくれる方法が違う
ということと言えるでしょう。
真言律宗の成り立ち
大きな分派の流れは以上の通り、古義新義の成り立ちで説明できます。
別の流れを汲む一派が真言律宗です。
真言律宗は、真言宗と、南都六宗の1つである律宗の考えを合わせた宗派であり、両者の中間のような存在なのです。
真言律宗は、真言宗からの独立が認められている特殊な宗派。
そのため、真言宗とは別宗派とする意見もあります。
しかし、自ら「真言宗寺院」と掲げている寺院もあり、始まりは真言宗であったことから、真言宗の1つの宗派と捉える事もできるのです。
まとめ
空海こと弘法大師が開いた真言宗は、今では多くの宗派に分かれて全国に広まっています。
それらの宗派は古義真言宗、新義真言宗、真言律宗に分類することができます。
真言宗は日本仏教の中でも、多くの宗派に細分化されています。
まことにややこしいこと、この上ないですが、ご自身のお寺がどこの宗派に属するのかくらいは覚えておいても良いかもしれないですね!