お寺の門をくぐる時、仁王立ちした2体の像に睨まれた経験はありませんか。
優しそうな仏様の像とは違い、筋肉ムキムキで目を見開いて少し怖いですよね。
まるでお寺を守っているように見えますが、あの金剛力士像は何のためにあるのでしょうか。
注目していきます。
ということで
金剛力士像の意味|2体の仁王立ちした姿の理由とは
をお送りします。
金剛力士像(仁王像)の意味と由来
お寺の入口には仁王門(におうもん)と呼ばれる門があります。
仁王門に配置される像が、金剛力士像(こんごうりきし)で一般的には仁王像とも呼ばれます。
金剛力士像はサンスクリット語では「ヴァジュラダラ(金剛杵を持つもの)」という意味を持ちます。
金剛杵(こんごうしょ)、仏様の敵を退治する武器のことですね。
要は外敵からお寺を守るために、ガードマンとして立っているのです。
しかしガードマンということもあり、彼らの地位は低めです。
「天部(てんぶ)」という地位に含まれ、「如来」→「菩薩」→「明王」の次の4番目の地位となります。
これは弁財天などと同じ位ですね。
阿形吽形の左右配置
仁王門には一般的に阿行像と吽行像2体の金剛力士像が一対として左右に配置されます。
- 向かって右側が阿行像(あぎょうぞう)
- 向かって左側が吽行像(うんぎょうぞう)
奈良の東大寺の運慶と快慶作の仁王像が有名ですね。
阿形像は口を開いていて、吽行像は口を結んでいます。
この口の違いは、阿形像は声を上げて怒っている様子を、吽行像は怒りを心のうちに秘めている様子を表します。
また阿吽の口は物事のはじめとおわりを表すとも言われています。
「阿」がはじまりで、「吽」がおわりです。
これはヨガで使われるマントラの「オーム」の考え方といっしょですね。
「息がぴったり合っていて意志の疎通ができている」意味を持つ『阿吽の呼吸』という言葉は、阿形像と吽行像が由来です。
チームワークはきっと完璧なのでしょうね。
冒頭で「一般的に」と書きましたが、必ずしも2体一対で配置というわけではありません。
同じ東大寺の法華堂に配置されている、執金剛神(しゅうこんごうじん)と呼ばれる国宝を守る金剛力士像は1体です。
もともと執金剛神1体でしたが、敵から仏様を守るために2体の金剛力士像になったようです。
金剛力士像の特徴
金剛力士像の特徴は他の仏像や明王とは少し違った特徴があります。
- 上半身裸
- 筋肉ムキムキ
- 腰に布を巻いている
- 武器(金剛杵)を持っている
まさにガードマンにぴったりの風格ですね。
阿行像と吽行像の見分け方は、先ほど記述した口が開いているか閉じているかで簡単に判別することができます。
また、昔(奈良時代以前)の金剛力士像は上半身裸ではなく、甲冑を身につけていたとされています。
武器の金剛杵は、古代インドでは最強の武器とされていたため密教にも取り入れられ、使われるようになりました。
金剛力士像の真言
金剛力士像の真言は、阿行像と吽行像でそれぞれ存在します。
阿行像
ナマサマンダバ サラナン トラダリセイ マカロシヤナキャナセ サルバダタアギャタネン クロソワカ
吽行像
ナマサマンダバ サラナン ケイアビモキャ マカハラセンダキャナヤキンジラヤ サマセ サマセ マナサンマラ ソワカ
出だしだけは同じですね。
金剛力士像のご利益
金剛力士像はお寺に侵入した悪者を退治するために配置されている目的から、寺院繁栄のご利益があります。
他にも身体の部位の足にご利益があるとされています。
仁王門では草鞋を奉納したり、掲げたりすることで足へのご利益を願っていたようです。
まとめ
お寺に配置されている像は、門の入口でお寺を見張って悪い敵が入ってこないか見張っているのです。
あんな怖い像に睨まれたら、怖くてそのお寺からは逃げ出したくなっちゃいますよね。
神社の狛犬や沖縄のシーサーも同じように守り神として入口に祀られています。
今の時代にはお寺に外敵が現れることはほぼありませんが、金剛力士像が配置されたお寺はしっかり守られているので、安心して参拝ができますね!