家にいると時々、キリスト教系の冊子を配りに訪問してくる方がいますよね。
それは「エホバの証人」であることがほとんどです。
- キリスト教の一つと考えていいのか?
- キリスト教とは何が違うのか?
今回はその違いについて、分かりやすくご紹介したいと思います。
エホバの証人とキリスト教の違い
エホバの証人は、キリスト教とはどういった点が違うのでしょうか。
キリスト教との違い
- 崇拝対象
- 聖典
- 主な制限事項
3つのポイントから確認してみましょう。
1.崇拝対象の違い
キリスト教は「三位一体」説を採用しています。
- 父
- 子(イエス・キリスト)
- 聖霊
この三つの要素が合体して一つの神になると考えています。
つまりキリスト教の信者は「神の子であるイエスも神である」と考えます。
一方で、エホバの証人は、三位一体を否定しています。
エホバの証人はイエスを敬っていますが、「神はエホバのみ」という立場です。
イエスはあくまでも「神の子」であって、神ではないと主張しているのです。
崇拝対象の違い
- キリスト教:三位一体(キリストは神)
- エホバの証人:三位一体を否定(キリストは代弁者)
2.聖典の違い
キリスト教とエホバの証人では、用いる聖書にも違いがあります。
- キリスト教:『聖書(旧約聖書、新約聖書)』
- エホバの証人:『新世界訳聖書』
順にみていきましょう。
キリスト教で使われる旧約聖書・新約聖書とは?
キリスト教の使っている聖書は、派閥によって旧約聖書と新約聖書の2つに分けられます。
多くの人は、「カトリックが旧約聖書」「プロテスタントが新約聖書」という誤解をしていますが、それは違います。
旧約・新約の「約」という字は、契約を意味します。
つまり、はじめの契約が「旧約聖書」で、新しい契約が「新約聖書」ということですね。
旧約聖書は、預言者モーセが、神の啓示を受けた際の契約を表しています。
小学校で習った「モーセの十戒」というやつですね。
ユダヤ教の人々もこの教えを信じています。
一方で、新約聖書は、イエス・キリスト誕生後の神の啓示を記しています。
堕落した教会を戒めるためにイエスが使わされ、新たな契約を結びなおしたものです。
イエスを信じれば、神と契約が交わせるとされています。
- 旧約聖書:モーセの十戒を基にしたはじめの契約
- 新約聖書:イエス・キリストの教えを基にした新しい契約
エホバの証人で使われる新世界訳聖書とは
エホバの証人は、独自の翻訳である「新世界訳聖書」を用いています。
この聖書は、布教活動の中で無償で配布されています。
聖書との違い
- 神の名前「エホバ」が使われていない
- 翻訳家の名前が載っている
- 原文に忠実性でない(翻訳家の解釈が含まれている)
この翻訳は、エホバの証人ではない学者にも好意的に受け取られています。
「明らかにこの翻訳は,熟練した有能な学者たちの手によるものである。彼らは,可能な限りの英語表現を駆使してギリシャ語本文の真の意味をできるだけ正確に伝えようとしてきた」
一方で、「改ざん聖書」だという批判の声もあります。
自分たちの教理を聖書と一致させるために、無理な翻訳をしているという批判です。
特に「地獄」の存在の有無についての翻訳で、両者の意見はぶつかっているようです。
キリスト教では、罪を犯すと地獄で永遠の苦しみが待っていると聖書を読み解いています。
一方で、エホバの証人は地獄の存在を否定しています。
罪を犯したものを待っているのは、地獄ではなく、滅びであると考えているのです。
3.主な制限事項
基本的に、生活上の制限がないキリスト教に対して、エホバの証人はたくさんの制限を受けています。
主な禁止事項をみてみましょう。
禁止事項一覧
- 輸血
- 自慰行為
- クリスマス・誕生日を楽むこと
- 「娯楽要素が強く暴力性のある」スポーツ(ボクシング・柔道・剣道など)
- 競争・政治・恋愛などに触れるメディアの閲覧(TV・映画・アニメ・漫画など)
- ゲーム・ギャンブル・インターネット
- 派手なメイク・男性がヒゲを伸ばすこと
これはちょっと普段の生活がままならなくなってしまうレベルですよね。
その代わりエホバの証人は、布教活動に熱心に取り組んでいます。
娯楽に充てる時間をつかって、「ものみの塔」というパンフレットを配っています。
また、聖書の勉強にも熱心です。
週2回集会が行われ、聖書の教えを調べたり、生活の中でどう実践できるかを考えたりしているようです。
エホバの証人をどう捉えるか?
キリスト教とエホバの証人側で食い違いが大きい部分ですね。
考えていきましょう。
エホバの証人はキリスト教の一部なのか?
エホバの証人はホームページなどで、自らをクリスチャンであると認めています。
一方で、キリスト協会側からは「エホバの証人はクリスチャンではない」という見方をされています。
特に日本の教会はその傾向が強いようです。
キリスト教の活動とエホバの証人の活動を混同されるのを避けたいと考えているようですね。
実際にクリスチャンの方と世間話をした際に、そのようなことを言っていたことを覚えています。
「あれはどう考えてもおかしい。一緒にされるのは困る!」
しかし、日本大百科全書(ニッポニカ)によると、キリスト教は次のようなものとされています。
イエスをキリスト(救世主)と信じる宗教と定義づけることができる。
エホバの証人には、以下の特徴があります。
- イエスが救いのかぎであると信じている
- イエスの教えに従おうと努めている
したがって、辞書的にはキリスト教の一つと言えてしまうのかもしれません。
エホバの証人は危険思想なのか?
エホバの証人は「崇拝すべき対象は唯一神エホバのみ」と考えています。
そのため、政治では中立の立場をとり、国家権力に対して忠誠を誓ったりはしません。
- 国歌斉唱をしない(偶像崇拝にあたるから)
- 兵役の義務を拒否する(争いが禁じられているためでもある)
といった行動をとるため、国に対して反逆的と捉えられがちです。
そのため、思想や信仰の自由が認められていない国々では、エホバの証人が投獄されてしまうケースもあるようです。
とはいえ、エホバの証人は国家にとって脅威となるかというと、そんなことはありません。
エホバの証人のホームページを見てみると、エホバの証人は政府に対して敬意を払っているという旨の文章が記載されています。
わたしたちは政治に参加しませんが,政府当局の権威に対して敬意を払います。これは,「すべての魂は上位の権威に服しなさい」という聖書の命令に調和したものです。(ローマ 13:1)わたしたちは,法を遵守し,税を納めます。また,国民の福祉を図る政府の取り組みに協力します。政府を倒そうとする企てには加わりません。
引用:エホバの証人HP
そもそも、エホバの証人は「争いをしてはいけない」と決められているので、自分の権利を主張することはあっても、誰かを攻撃することはほとんどないと考えていいでしょう。
こう考えていくと・・・
凄惨な歴史を持つキリスト教の方が、よっぽど危ないようにも思えてきてしまうから不思議ですね。
まとめ
キリスト教とエホバの証人の違いをまとめてきました。
辞書的には、エホバの証人はキリスト教に分類されますが、私たちが想像するキリスト教とは違いが多いといえるでしょう。