「大学で宗教学を専攻している」と聞くとアナタは、どんなイメージを持ちますか?
- お坊さんになる勉強?
- 宗教を開くための勉強…?
正直、あまりイメージが湧かないという人も多いでしょうね。
しかし、東京オリンピックを目前に控えた今、日本でも宗教学に注目が集まりつつあります。
そこで今回は、
宗教学とは何か【何を/なぜ/学ぶ】か分かりやすい解説まとめ
をお送りします。
多角的なアプローチで読み解く宗教
「大学で宗教学を専攻していました」と言うと・・・
「何教を信仰しているんですか?」と聞かれる事があります。
日本では宗教学にあまり馴染みがないのですね。
宗教学と言うのは、『特定の教義のみを学ぶ』ものでも、ましてやそれらを『賛美して広めよう!』と言うものでもありません。
大学で学ぶ宗教学とは、【様々な視点(学問的立場)から宗教にアプローチをする】、またはその逆で【様々な事象を宗教的な立場から読み解いていく】ということをします。
つまり宗教学ってかなり学際的なんですね。
もちろん、ひとつの宗教の教義だけを学ぶ神学・宗学を開講している大学もあるかと思いますが、それはあくまでも概論であり、その知識を持って、もっと多角的な研究をしていく事になります。
以下、一般的に宗教学と言われる学問です。
※ex)は「例えばこんな授業です」という、あくまでも一例です。
宗教社会学
宗教と社会との関わりを読み解きます。
ex)宗教が現代社会に与える影響を考える。
宗教民俗学
民間信仰を中心に学びます。
ex)富士塚を辿り山岳信仰について学ぶ。
宗教心理学
宗教的事象に発現する様々な事象を心理学的に読み解く。
ex)個人における宗教性の発達について考察する。
宗教人類学
宗教的現象を人類学の観点から読み解いていく。
ex)アニミズムとは何か?
比較宗教学
諸宗教の起源・特質・特徴などを、他の宗教と比較しながら解明していく。
ex)キリスト教と仏教の死生観の違い。
上記の学問の研究方法として、現地での調査や数学的データの解析、そして文献を読み解いたりと、その方法もさまざまです。
また、文献を読み解く際、原典を読む必要があるため、ドイツ語・ラテン語・サンスクリット語など語学も学ぶ必要があったり、理論的に物事を考えていくため、論理学を学ぶ必要があったりもします。
そのほか、【宗教史】や【宗教美術論】、【宗教地理学】など独自の宗教的観点で授業を開講している大学もあります。
宗教学の目的
では、宗教学を専攻し勉強したとして、それらに何の意味があり、どのような役にたつのでしょうか。
…何をどう活かすかは自分次第!というのが大きいですが(笑)
一般的に最もよく言われるのが【異文化への理解】です。
日本ではあまり意識される事が少ないですが、世界的に見て宗教は人々の生活にしっかりと根付いています。
つまり宗教を理解する事はすなわち、その人自身や、ひいてはその国や文化を理解する事です。
東京オリンピックでは、様々な信仰を持った人々が日本にやってきます。
その時に、彼らの宗教を少しでも理解出来ていることが、コミュニケーションを取る上で、非常に大きな強みになります。
さらに、世界の宗教を比較し、研究をする事で、広い視点を持つ事が出来ます。
これらはまさにこれからの時代に必要とされるスキルです。
その他、膨大な量の文献を読み解いていかなくてはならないため、忍耐力も培われます。
就職には有利?不利?
大学で宗教学を学んでみたい!という人が最も気にかけるのは、就職ではないでしょうか。
宗教学を専攻して、就職が出来るのか…。
これに関しては、宗教学もその他多くの文系の学科同様、宗教学とはあまり関係のない職に就くことがほとんどです。
そしてそういった場合、宗教学専攻が就職の妨げになる事はまずありません。
むしろ、宗教学を専攻していると言うと、とても興味を持たれる職種があります。
その中のひとつが、CA(キャビンアテンダント)です。
CAは常に様々な信仰の人と触れ合うので、宗教に関する知識が必要になります。
そのため、宗教学を専攻しているというのは多いにアピール出来ると思います。
その他、テレビマンや新聞記者も【宗教的な観点】で物事を切り取る事が出来る点を【面白い】と評価される事があります。
まだまだ日本には馴染みのない観点ですからね。
つまり、宗教学を専攻したからと言って就職に困るという事は全くありません。
むしろ、これからの時代宗教への理解は、必ず必要とされていくことでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
大学で宗教学を専攻した場合の事が想像できましたか?
ここに挙げた学べる分野は、あくまで一般的な一例で、大学・教授によって本当に様々な授業が開講されています。
世界には民間信仰も含め非常にさまざまな宗教がありますので、幅広く学び、知識を深め、それぞれの文化を理解していけるといいですね。
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